東京電力ホールディングス(HD)とNTTは19日、協業を拡大すると発表した。特別目的会社(SPC)を設立して千葉県印西市・白井市エリアに他企業向けの5万キロワットのデータセンターを建設し、2026年下半期に運営を開始。群馬県嬬恋村で蓄電池事業を手掛ける合同会社も設立済みで、25年度に事業を始める。両社のアセットとノウハウを持ち寄り、エネルギーの地産地消やカーボンニュートラルの推進に取り組む。

 データセンター事業はNTTデータグループ、NTTグローバルデータセンター(東京都千代田区、鈴木康雄社長)、東京電力パワーグリッド(PG)が共同で行う。23年度内にNTTグローバルデータセンターと東電PGが折半出資でSPCを設立。千葉印西・白井エリアを手始めに、首都圏で順次データセンターを開発・運用する。

 蓄電池事業は東電HD、NTTアノードエナジー(東京都港区、岸本照之社長)が組む。11月28日に折半出資の合同会社「嬬恋蓄電所」(東京都千代田区)を設立済み。嬬恋村に容量9300キロワット時、出力2千キロワットの蓄電池を設置し、25年度から運用する。嬬恋村での事業は経済産業省・資源エネルギー庁の補助事業にも採択されている。

 インフラ事業を担う東電HDとNTTはこれまでも協業しており、18年にTNクロスを折半出資で設立した。同社は自治体の施設に太陽光発電や蓄電池を設置し、VPP(仮想発電所)として運用する事業を手掛ける。

 電力事業は出力が不安定な再生可能エネルギーの普及拡大に伴い、通信技術によってどう制御するかが課題になっている。NTTが保有する高度な通信技術や蓄電池のネットワークは、東電HDが電源の分散化やエネルギーの地産地消、デマンドレスポンス(DR)に取り組む上で大きなシナジーを生み出す可能性がある。

 NTTは次世代通信技術「IOWN」の開発や国産生成AI(人工知能)のサービス化を進めており、その普及のために必要となるデータセンター事業の拡大に5年で1兆5千億円を投資する計画を掲げている。電力を多く使うデータセンターの新設や拡張に向け、東電HDのノウハウを生かしたい考えだ。

 電気事業と通信事業のガリバー同士の協業が、大規模なアライアンスにつながるかどうかも注目される。

 東電HDは9兆円以上のカーボンニュートラル投資を進めるために、大規模なアライアンスが必要とのスタンスだ。原子力損害賠償・廃炉等支援機構(賠償廃炉機構)が1日にまとめた提言でも、企業価値を高めるためにJERAに匹敵するアライアンスが必要と指摘されていた。

電気新聞2023年12月20日