SCEのデータ活用の取り組みが詳しく紹介されたパート2
SCEのデータ活用の取り組みが詳しく紹介されたパート2

 
 複雑化する電力の系統運用について課題解決の道を探るべく、今年9月、電気新聞では、日米の電気事業者などが参加するワークショップ「複雑化する電力系統の維持 データ活用の可能性」(協賛:SAS Institute Japan株式会社)を東京都内で開催した。

 同ワークショップには電力各社や電力広域的運営推進機関など、国内の電力設備運用に携わる関係者と、米サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)からのゲスト、総勢14人がラウンドテーブルに着き、日米共通の課題を議論した。

 ワークショップはパート1として「再生可能エネルギー導入における共通課題」を、パート2として「電気事業におけるデータ活用のあり方」をテーマに議論が行われた。今回はパート2前半の議論の概要を紹介する。

 
SCEで実践されるデータアナリティクスの手法とは?
 
 「電気事業におけるデータ活用のあり方」をテーマとするパート2は、
前半で、データアナリティクスを全社的に展開するSCEの具体的取り組みを題材に議論が行われた。SCEでは電気事業経営のあらゆる場面でデータ分析を導入しており、その具体的な事例が紹介された。その上で、日本の電気事業者らとの間で、データの価値の見いだし方や具体的な活用策、人材育成、組織のあり方などまで議論が及んだ。

 パート2の冒頭、ビブ・コーシック・SCE系統技術・近代化部門ディレクターから「SCEにおけるデータアナリティクスツールの活用について」と題したプレゼンテーションが行われた。

説明するコーシック氏
説明するコーシック氏

 コーシック氏は、「電力会社はそれぞれ、エネルギーミックスの達成や電力システム改革への対応など、それぞれが異なる課題を抱えていることと思う。その一方で、世界的に電力会社に共通しているのが、『多種多様なデータを持つ』ということだ。その活用は各社が抱えるさまざまな課題の解決、さらには経営革新につながるだろう」とし、SCEではすべての部門でデータ分析を導入していると強調。オペレーション、カスタマーサービス、送配電部門など、すべての部門でアナリティクスツールを活用しており、SCEの中にはSASのユーザーが500人程度いることも明かした。

 さらに、アナリティクスツールの具体的な使い方の例も紹介。送配電部門のKPI(経営管理評価指標)管理や顧客管理、CAISO(カリフォルニア独立系統運用者)へのDR(デマンド・レスポンス)入札や太陽光発電の需要予測の精緻化などの例を挙げたほか、系統近代化を進める中での、分析ツールの導入による投資効果やコスト削減などについても言及した。
 
SCE社内にデータアナリスト500人。各部門に配置し課題を共有
 
 プレゼンテーション後の議論では、「データサイエンティストの養成をしようと取り組んでいるが、日本は統計学の学科が少ないのでなかなか厳しい。どうやって500もの人を養成したのか」という質問に対し、「何年にもわたり育成し徐々に増えた。当初は限定的だったが、DRの入札に際し、高度なアナリティクスが必要と認識し分析ツールを導入。同時にツールを使える人を採用した」と説明した。

 また、人材育成については「カリフォルニア州ではさまざまな大学でデータサイエンスの教育プログラムがあり、スタッフをこうした教育機関で学ばせたり、統計学出身の学生を積極的に雇用したりしている。SASからの教育も受けており、社内の各グループによる知識の共有は効果があった」と指摘した。組織配置については、「各部署に人材を置いて、他部署と連携していくのがよいと思う」などと述べ、社内に保有するデータをいかに有効に活用していくかという点に関するSCEとしての考え方について説明した。

 次回は、パート2-2「データ分析を用いた電気事業における経営革新の提案」の概要を紹介する。
 

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