SASの
プレゼンテーションを行うSASジャパンの小野恭平氏

 複雑化する電力の系統運用について課題解決の道を探ろうと、今年9月、都内で開催された日米の電気事業者らが参加するワークショップ「複雑化する電力系統の維持 データ活用の可能性」(主催:電気新聞、協賛:SAS Institute Japan株式会社)。パート1では「再生可能エネルギー導入における共通課題」、パート2では「電気事業におけるデータ活用のあり方」をテーマに議論が行われた。

 パート2-1の前半部分では、電気事業経営のあらゆる場面でデータ分析を導入しているSCEの手法の紹介や人材育成や組織のあり方などが議論された(前報参照)。後半部分のパート2-2では、今回のワークショップを共催するSASジャパンより、電気事業分野におけるSASのグローバルな取り組みについてプレゼンテーションが行われた。今回はパート2-2の概要を紹介する。
 
世界最高の電力系統運用を目指す取り組みにSASが貢献
 
 パート2-2では、SASジャパン・ソリューション統括本部シニアプリセールスコンサルタントの小野恭平氏が、「Grid×The SAS Platform ~世界最先端の系統運用を目指して」をテーマにプレゼンテーションを行った。

 小野氏は世界の電力・エネルギー事業者におけるSASのシステム活用事例を紹介。「日本でも、次世代の電力プラットフォーム構築に関する検討が進められるなど、エネルギーデータを活用した新ビジネスが急速に進む」と分析し、これからの系統運用に求められる要件として、(1)分散型電源が増える中での系統の自律制御の実現、(2)電力市場の設計とネットワークのコスト負担ルール整備、(3)系統運用の最適化と顧客サービス価値を最大化するためのビッグデータ解析――の3点が重要だと指摘した。

 この3点の中でも、とりわけビッグデータ分析については、「SASが日本の電力業界に貢献できる点」とし、統合データ分析ツール「The SAS Platform」の活用によって、継続したデータ分析という仕組み作りが可能であることを紹介した。「仕組み化」を具体的に行うためには、「業務システムと分析システムが総合的に連携していくアナリティクス・ライフサイクルを構築していくことが望ましい」と述べた。アナリティクス・ライフサイクルとは、堅牢性が求められる業務系の機能と、柔軟性が求められる分析システムの機能をしっかり識別した上で連携し、データの管理から、分析、可視化などを経て、最終的には経営の意思決定につなげるというプロセスのことだ。

 また小野氏は「複雑化する電力系統への対応は電気事業者の方々にとって共通の課題だが、各社が個別に検討を進めるには負担が大きいのではないか」と指摘し、今回のような海外の電力会社や最先端グローバルパートナーとの勉強会・議論の場を定期化し、情報収集・共有化を継続して行っていくことを提案。「世界最高の電力系統運用を目指す取り組みに、SASはデータ分析によって引き続き貢献していきたい」と語った。

 
 
議論を経て、共通課題を認識。多くの気付きや学びも

関氏
 モデレーターを務めた東京電力ホールディングス常務執行役の関知道氏

 
 パート1、パート2を終え、モデレーターを務めた東京電力ホールディングス常務執行役の関知道氏がワークショップを総括した。

 関氏は、「データが新たな価値を生むといわれているが、自らの持つ膨大なデータをまだ活用しきれていないという気付きがあった」と述べた上で、「日本は旧一般電気事業者が引き続き全体の供給責任を負うが、米国では市場の各事業者に役割や責任を分配している点が異なる」と指摘し、旧一般電気事業者の法的分離が迫る中、米国のような契約社会における考え方についても意識していく必要があるのではないかと分析した。

 さらに「カリフォルニアでは電力供給が、大規模集中から分散型へ、高電圧から低電圧への一方通行型から配電系統での双方向型へと、非常にダイナミックに変わっていることを改めて認識した」とし、「SCEではデータサイエンティストを各部門で分散配置するなど、組織内での仕組みづくりでも多くの学びがあった」と述べた。最後にSCEからのゲストであるコーシック氏に対し、参加者を代表し謝意を述べてワークショップを締めくくった。
 

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