系統の近代化について話し合った日米電力ワークショップ
系統の近代化について話し合った日米電力ワークショップ

 
 太陽光発電の急速な普及や電気事業の規制改革、技術革新などにどう対応するのか。複雑化する電力の系統運用について、課題解決の道を探るべく、今年9月、電気新聞では、日米の電気事業者などが参加するワークショップ「複雑化する電力系統の維持 データ活用の可能性」(協賛:SAS Institute Japan株式会社)を東京都内で開催した。

 日米電力ワークショップには、電力各社や電力広域的運営推進機関など、国内の電力設備運用に携わる関係者と、米サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)からのゲスト、総勢14人がラウンドテーブルに着き、日米共通の課題を議論。データアナリティクスを全社的に展開するSCEの具体的取り組みなども披露され、白熱した議論が繰り広げられた。

 ワークショップは、パート1として再生可能エネルギー導入における共通課題を、パート2として電気事業におけるデータ活用のあり方をテーマに議論した。今回はパート1の概要を紹介する。
 
事業基盤の環境変化にどう取り組むか
 
 「電気事業における環境変化が急速に進んでいる。拡大する再生可能エネルギーとの調和については、カリフォルニアには最新の知見がある。足元の課題についての先進事例や今後の大きな課題や展望について共に学びたい」。ワークショップの冒頭、モデレーターを務める関知道・東京電力ホールディングス常務執行役は、議論への意欲を示した。

 「カリフォルニアと日本 再生可能エネルギー導入における共通課題」をテーマとするパート1では、米国カリフォルニア州の電気事業者、サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)のビブ・コーシック氏と、九州電力送配電カンパニー電力輸送本部系統運用部長の和仁寛氏が、現状や取り組みを説明した。
 
電力系統の近代化に向けて具体的に動き出すSCE
 

SCEの取り組みを紹介するビブ・コーシック氏
SCEの取り組みを紹介するビブ・コーシック氏

 
 カリフォルニア州は米国でも再生可能エネルギーの導入先進地で、野心的な温室効果ガス削減目標を立てている。カリフォルニア州の電気事業者であるSCEの系統技術・近代化部門ディレクターを務めるビブ・コーシック氏は、同社が取り組む電力系統の近代化(Grid Modernization)の具体策や今後、目指す姿などを解説。系統近代化に向けて2021年までの3年間で18億ドルを投じる計画について詳しく紹介したほか、今後、DSO(配電系統運用者)の市場ができた場合には市場のオペレーターになることも念頭に置いていることなどを説明した。
 

太陽光比重が高まる中で気象観測や蓄電池導入を進める九州電力
 

九州エリアの状況を解説する和仁寛氏
九州電力の取り組みを解説する和仁寛氏

 
 九州電力の和仁氏からは、すでに電力需要の8割を太陽光発電が占めた日が発生するなど、世界規模でみても太陽光発電ウエイトが大きくなっている九州エリアの状況についてプレゼンテーションが行われた。電気の品質を維持するためには精緻な予測と運用が重要として、九州電力では気象観測地点を増やしたり、世界最大級の蓄電池を設置するなど、さまざまな対応策を講じていることも紹介した。
 
系統近代化は災害対応力向上にも
 
 これらのプレゼンテーションを受けて、参加者が議論。系統近代化への人材養成やコスト回収、顧客満足度などについて意見が交わされた。コーシック氏からは系統近代化が災害対応力向上にもつながるとの指摘もあった。

 次回はパート2-1の概要を紹介する。
 

※日米電力ワークショップ詳細レポートプレゼントは終了しました

 

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