関西電力は21日、兵庫県姫路市で受け入れる液化水素を全国輸送するため、JR西日本、JR貨物、NTTなどと調査・検討を開始すると発表した。貨物列車、線路脇に敷くパイプライン、電話やインターネットの地下管路といった各社のインフラを最大限活用し、安価で効率的に輸送する。2030年代の社会実装を目指す。

 NTTアノードエナジー、パナソニックを含めた6社が21日、水素輸送や利活用での協業に基本合意した。関電は姫路エリアで受け入れ・貯蔵拠点整備を視野に入れる。貨物列車の活用も期待できる地点であり、全国輸送の起点とする。

 関電によると、具体的なエリアを想定し、各社のインフラを使って水素供給網を検討する取り組みは国内初。30年代の実用化を目指して実現可能性調査(FS)を実施し、結果を踏まえて実証実験に移る。

 液化水素は関電が調達する。火力発電所や工場での利用を探る。JR西日本は燃料電池(FC)トレインに活用し、鉄道の脱炭素化につなげる。全国へ輸送する水素はJR貨物の姫路貨物駅から運び出す。

 別の貨物駅に到着した水素は、JR西日本が線路脇に新設するパイプラインを使ってターミナル駅まで輸送する。NTTとNTTアノードエナジーは通信局舎から張り巡らされる通信管路内に、安全性を担保した上で水素輸送用の配管を設置。商業施設などがある都市部で利用する。パナソニックは自社製燃料電池を活用する枠組みを検討する。

 関電は産業横断的に需要を集め、50年に水素取扱量で全国シェア3割を目指す。今回発表した協業とは別に、LNG火力の姫路第一発電所、姫路第二発電所で水素混焼を検討している。

電気新聞2023年11月22日