ペロブスカイト太陽電池の事業化について説明する加藤社長

◆耐久性、効率向上へ開発進む/首相、25年市場投入を言明

 積水化学工業のフィルム状ペロブスカイト太陽電池が、脱炭素社会に向かう日本の「キラーコンテンツ」の一つとして注目を集めている。10月に首相官邸で開かれた東京GX(グリーントランスフォーメーション)ラウンドテーブルに加藤敬太社長が出席。11月末からアラブ首長国連邦(UAE)で開催される国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)でもプレゼンテーションやサンプル出展が決定している。10月に社長直轄の組織を新設し、2025年度の事業化へ加速する。

 「ペロブスカイト太陽電池は30年を待たず早期社会実装を目指す」。4月の再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議で岸田文雄首相が号令を掛けた。6月には西村康稔経済産業相が積水化学を訪問し、今後の進め方を協議した。10月の東京GXラウンドテーブルでは岸田首相が25年の市場投入を言明した。

 ◇安全保障に貢献

 15日に都内で報道陣向けに開いた中期経営計画説明会で、加藤社長はペロブスカイト太陽電池について「脱炭素社会推進だけでなく、エネルギー安全保障の観点からも注目されている」と述べた。主原料のヨウ素は産出量の3割を日本が占める。シリコン製の太陽光パネルを中国製が席巻する中、国産技術への期待が高まる。「欧州からの関心も寄せられている」(積水化学関係者)

 積水化学は着実に開発を進めている。30センチ幅のロール・ツー・ロール製造方法を確立し、グリーンイノベーション基金の支援を受けながら1メートル幅に拡大を目指す。

 ◇シリコン系並み

 加藤社長は「耐久性と発電効率のさらなる向上に取り組む」と強調した。現在の発電効率は15%で、シリコン系太陽電池並みの20%まで高めたい考え。耐久性は10年を達成済みで、将来的に20年まで延ばせるよう研究を進める。積水化学は液晶で培った封止技術で水分の流入を防ぎ、高い耐久性を実現する。

 技術開発で先行する積水化学には、様々なパートナーから協業・提携プランが舞い込む。東京都の下水処理施設や、JERAの火力発電所に設置して性能を検証する。東京電力ホールディングスなどが建設する超高層ビルでも千キロワット超の採用が決まった。

 10月に社長直轄組織の「PVプロジェクト」を設置し、事業化の加速を狙う。25年度の事業規模は5億円を計画する。加藤社長は「原料メーカーや装置メーカーを含め、オールジャパンで事業を成功させる」と意気込む。

電気新聞2023年11月17日