「日立エナジーの受注が非常に好調」と日立の決算会見で話す河村副社長

 ◆欧州送電市場が活況

 日立エナジーの受注残が約3兆9千億円となり、売上収益で2年以上に積み上がった。高圧直流送電(HVDC)設備をはじめ大型事業を相次ぎ獲得している。27日の決算会見で日立製作所の河村芳彦副社長・最高財務責任者(CFO)は「エネルギーセクターでは何十年に一度の非常に多くの投資が入る『スーパーサイクル』が、あと5~10年は続く」と展望した。

 日立エナジーは2023年度中間期、受注高で前年同期比42%増の1兆6693億円を獲得した。同社の23年度通期の売上収益見通し1兆6663億円に照らすと、半期で1年分の受注高を稼いだ計算だ。

 ウクライナ危機に伴い、欧州域内で電力を融通できるよう国際連系線の計画が次々と生まれた。HVDCは長納期品のため、日立によると受注残の2割は23年度、5割が24年度に売り上げに反映されるという。

 日立は30年頃まで設備投資の超高水準が続くと見通す。同社が参照する国際エネルギー機関(IEA)が10月に公表した報告書は、世界で年3千億ドルの送電網投資を30年までに年6千億ドルに倍増すべきと説く。50年カーボンニュートラルに向け電化と再生可能エネルギー大量導入を進めるには、40年までに計8千万キロメートル以上の送電網で増強や改修が必要になると指摘する。これは世界の既設送電網に匹敵する設備量だ。

 IEAは少なくとも30億キロワットの再エネ事業が系統連系を計画中と分析する。この量は22年に導入された太陽光と風力の合計容量の5倍相当だ。発電事業に比べ送電網への投資が遅れており、「特に中国を除く新興市場国と発展途上国で送電網投資が減少している」と懸念を示した。再エネ事業が計画から完成まで1~5年で済む一方、送電網は5~15年を要するため計画の立ち上げを急ぐよう促す。

 送電網市場の活況に伴い、HVDCなど関連設備のさらなる需要増加も想定される。河村副社長は「数百億円を投資して生産増強する」と強調した。さらに「一部はアウトソーシングする」とし、外部工場を活用しながら生産能力を底上げする考えを示した。

 日立の受注高を巡っては、原子力が23年度7~9月に549億円と、前年同期比90%の高水準を記録した点も特徴。全て国内案件の受注だ。内容の詳細は明かさず、河村副社長は「保守や周辺の仕事をコンスタントにやっている。SMR(小型モジュール炉)などはもう少し先なので、ここ数年で原子力の受注が大きく増減することはない」と述べるにとどめた。今回の受注高の伸び率が一過性とも説明した。

電気新聞2023年10月31日