東京電力エナジーパートナー(EP)は12日、地域冷暖房事業や特定送配電事業用の電熱併給型システムの運転をAI(人工知能)で最適化できるエネルギーマネジメントシステム(EMS)を開発したと発表した。電力・熱需要を30分周期で高精度に予測し、蓄熱槽や熱源機などの最適な運転パターンを30時間先まで立案する。デマンドレスポンス(DR)の要請にも即時に対応できる。2024年度上期中の製品化を予定しており、都市部の再開発案件への導入を目指す。

 電熱併給型システムはコージェネレーションシステムや冷凍機、蓄熱槽など様々な機器で構成され、効率良く運用するのは難しい。加えて太陽光の拡大に伴い、需要を動かして調整力を生み出すDRへの対応も重要性を増している。これまでは運転員の経験に頼っていたが、人手不足も深刻化しつつある。

 これらの課題を解決するため、AIを活用したEMSを開発した。東京大学生産技術研究所の大岡龍三教授、御琴ストラテジー(東京都千代田区、池田伸太郎社長)との共同事業となる。

 EMSには3つのAIを搭載することで、30時間先までの電力・熱需要と最適な運転計画を30分周期で自動計算する。導入施設の電気・ガス契約条件や、機器の故障リスクなども加味する。

 DRへの対応も容易で、要請された需要抑制量を生み出すために最適な運転計画を立てられる。また、需要抑制量に応じて対価が増える料金メニューを契約している場合は、どこまで需要を下げられるかを把握できる。

 実際の電熱併給型システムの運転実績と、EMSを使った30時間先までのシミュレーション結果を比較したところ、高精度の需要予測や蓄熱量の最適化などによって1次エネルギー消費量を13%、二酸化炭素(CO2)排出量を21%、運用コストを13%削減できた。今回の成果を基に工場やビルなどに導入可能なEMSの開発も今後検討する。

電気新聞2023年10月13日