高砂製作所に構築した水素気化器を含むハイブリッド型水素ガス供給システム

 神戸製鋼所は14日、高砂製作所(兵庫県高砂市)でハイブリッド型水素ガス供給システムの実証試験を開始したと発表した。再生可能エネルギー由来の水素と、液体貯蔵された水素を組み合わせて使うことでコストの抑制と、供給安定性の両立を図る。6月から試験用ボイラーで天然ガスとの混焼による利用実証を始めた。併せてガスタービン(GT)の水素混焼・専焼に必要な液化水素気化器の臨界圧(約1.3メガパスカル)での実証、実機規模の水素・都市ガス混焼工業炉の実証を行うことも発表した。

 ハイブリッド型水素ガス供給システムは(1)極低温液化水素気化器(2)再エネを活用する水電解式水素発生装置(3)需給を監視制御する運転マネジメントシステム――で構成される。

 再エネの出力変動の「しわ取り」として水素製造が期待される一方、不安定な供給量が課題となる。ハイブリッド型システムでは運搬された液体水素を気化し、再エネ由来水素と混合することで安定調達を図る。工業炉やボイラーなどでの利用を想定し、刻々と変化する水素使用量を監視し全体を最適制御する。気化時に発生する冷熱は、工場内の設備の冷却や空調、ヒートポンプなどに利用する。

 同システムのうち気化器の開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業の採択を受けている。気化熱源として水を用いプロパンなどの中間媒体を介し気化させる中間媒体式で、LNG用気化器の知見を応用する。腐食に強い金属を伝熱管に採用し、不純物を含む海水も対応できる点が特長。冷熱の有効活用にも適している。

 これまで運転圧力1メガパスカルでの運転を実証した。この成果をガスタービンの水素混焼・専焼へ応用するため、川崎重工業と新たなNEDO事業の採択を受けた。今後、約1.3メガパスカルでの伝熱挙動や気化性能を確認。神戸市ポートアイランドに設置した水素GTコジェネレーションシステム実証設備へ適用し、実際の発電設備で冷熱回収の性能検証を行う計画だ。

 さらに別のNEDO事業の一環として、ハイブリッド型水素ガス供給システムから水素供給を受けて、新設の実機規模(2千キロワット級)直接式加熱炉で、都市ガス専焼と水素混焼・専焼での試験材加熱特性の評価を行う。エネルギー多消費設備の工業炉の脱炭素へ向けて、液体水素の気化から利用の一連のサプライチェーン構築に貢献したい考えだ。

電気新聞2023年9月15日