東京電力パワーグリッド(PG)と日立製作所は5日、データセンター間の電力需給を制御する基礎技術を確立し、ビジネス化の検討を始めたと発表した。地点の異なるデータセンター間で、電算に使う電力や空調の使用・停止を一体的に制御することにより、太陽光発電など再生可能エネルギーの電気を余すことなく使えるようにする。電力需給調整市場の2次、3次調整力の要件を満たしており、市場投入を念頭に事業化を目指す。

 茨城県にある東電PGの小規模データセンターと都内にある日立のサーバールームを使い、2022年10月から今年3月にかけて実証を行った。その結果、基礎技術を確立し、特許を出願した。

 実証では、雨で太陽光が稼働していないエリアと太陽光が過剰に発電しているエリアを想定し、計算処理が必要なデータを太陽光過剰エリアのデータセンターに移管。これにより、電算による負荷を太陽光過剰エリアのデータセンターで吸収した。

 また、太陽光過剰エリアのデータセンターでは、夜間に予定していた計算処理を昼間に移して負荷を調整した。さらに、データセンターの中にある空調、照明をDER(分散型エネルギー源)として活用することで、細かい需給調整を行った。

 これらはいずれも、AI(人工知能)によるエネルギーマネジメントシステム(EMS)を使って制御した。

 データセンターは電力を大量に消費するため、増設する際は電力インフラの整備が必要となる。科学技術振興機構によると、2030年のデータセンターの電力消費量は、国内消費電力の約10%に相当する860億キロワット時に増加する見通しだ。

 データセンターは稼働するための電力輸送コストよりも、処理したデータを送る通信コストの方が安い。電源により近いところに設置する方が効率的なため、再エネの地産地消にも適している。

電気新聞2023年7月6日