周辺と調和するイメージを描いたiBRの完成予想図
 

 東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は、革新軽水炉(iBR)を次世代原子力戦略の中心に据える。11日に開いた技術説明会で薄井秀和取締役・CNO(最高原子力責任者)・原子力技師長が明らかにした。iBRはABWR(改良型沸騰水型軽水炉)をベースとする独自設計の大型次世代炉で、静的安全性の強化やコアキャッチャー搭載などで「緊急避難不要」を目指す。現行のABWRについても、再循環流量制御などで高い負荷追従性能を提供し、再生可能エネルギーとの協調を訴求する方針だ。

 薄井氏は、グリーントランスフォーメーション(GX)などを背景に「日本の原子力政策は転換期にある」との認識を示した。電源に占める原子力比率20%を満たすには、2030年時点で27基、50年時点で40基の稼働が求められると指摘し、再稼働支援と新増設の重要性を訴えた。

 iBRは既に稼働実績があるABWRがベースで、新増設の主軸と位置付けて開発する。鋼板コンクリート(SC)構造による格納容器建屋などで大型航空機の衝突にも耐える堅固性を確保。過酷事故(SA)時は、格納容器からの蒸気が大容量の施設内プールを循環。事故後7日間は運転員が操作しなくても安全を確保し、格納容器ベントも不要だ。溶融した燃料や炉内構造物を受け止め冷却するコアキャッチャーも備える。

 電気出力は80万、100万、135万、160万キロワットを想定。導入時期は事業者の意向にもよるが、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)原子力小委員会の革新炉ワーキンググループ(WG、座長=黒崎健・京都大学複合原子力科学研究所教授)が昨年まとめたロードマップに沿い、30年代に建設可能な状態を想定する。

 第4世代炉といわれる高温ガス炉について国は、設計、開発を担う中核企業に三菱重工業を選定する見通しだが、「(それより早い時期の導入が見込まれる)iBRに注力するために応募を見送った」という。高温ガス炉については、日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉「HTTR」へ納入実績がある機器や水素製造関連設備など、東芝ESSが得意とする分野で関与していく方針だ。

電気新聞2023年7月12日