アンモニア専焼を成功させたIHI横浜事業所の2000㌔㍗級ガスタービン

 ◆2拠点化で早期実現

 IHIは、大型ガスタービン(GT)でアンモニアを燃焼できるようにする試験設備を、同社相生工場(兵庫県相生市)に建設する検討を始めた。IHIは米ゼネラル・エレクトリック(GE)と協力し、数万~数十万キロワット級GTでアンモニアを専焼する技術を2030年までに開発する方針を掲げる。GT試験設備を横浜事業所(横浜市)との2拠点体制とし、早期実現を狙う。

 IHIは23年度からの新たな中期経営計画を策定した。3カ年で合計5千億円の投資枠の一部を、相生工場にGTアンモニア燃焼試験設備を新設する予算として確保した。

 相生工場に2千キロワット級GTの試験設備を建設する。IHIは横浜事業所にも2千キロワット級GTの試験設備を所有しており、すでに専焼を実現した。相生工場はボイラー向け燃焼バーナーの開発拠点として、微粉炭とアンモニアの混焼を研究している。

 IHIはJERAとの実証で、23年度から碧南火力発電所4号機で実際にアンモニア混焼を始める予定だ。石炭火力向け燃焼バーナーの開発で培った相生工場の知見をGTに生かす。GTを構成する燃焼器の開発がアンモニア燃焼の鍵を握る。燃焼時に排出される窒素酸化物(NOx)の低減も課題だ。

 燃焼速度が近いという理由から、一般的にガス火力のGTでは水素、石炭火力のボイラーではアンモニアとの混焼が適切とされる。だが、日本の大規模火力で大量の水素・アンモニアを確保するには輸入が必須。IHIは液化に要するエネルギーが少ないことから、アンモニアの海上輸送コストが水素より低いと見込む。輸入したアンモニアをGTで直接燃焼させる技術の確立を目指す。

 一方、三菱重工業は4万キロワット級GTでのアンモニア専焼を25年以降に実機で実施し、商用化する計画だ。大型GTではアンモニアを分解して水素を取り出し燃焼させる構想を描く。アンモニアの海上輸送が低コストとの見方はIHIと同様だが大型GTでの燃焼では経営判断が分かれる。

電気新聞2023年6月13日