◆1万5千キロワット級で
Jパワー(電源開発)、東京電力ホールディングス(HD)、中部電力は30日、新型浮体式風車の共同研究を始めると発表した。川崎汽船、アルバトロス・テクノロジー(東京都中央区、秋元博路代表取締役)を加えた5社で同日、契約を結んだ。2026年3月までに20キロワット級の小型実験機を製作・実証。順調に進めば、大型実験機の実証を経て32年頃までに1万5000キロワット級の商用機の運転開始を目指す。風車は「浮遊軸型」と呼ばれる特殊な構造で、低コスト化や国産化につなげる狙いがある。
5社は「次世代(浮遊軸型)風車の海上小型実証研究」に関する契約を結んだ。
浮遊軸型風車は、回転する円筒形の浮体で垂直軸型風車を支える仕組み。軸が傾斜しても発電性能が低下しにくく、浮体を小型化できる。クレーンを使わずに組み立てられる利点もあり、一般的な風車に比べて設備費用を半減できる見込み。発電機などの主要機器が海面近くに設置される構造上、保守費用の低減も期待できる。
風車は縦に分割して製造できるため大規模な工場が不要で、輸送しやすい。風車部分に使用するカーボン複合材の原材料である炭素繊維は、日系企業が8割のシェアを持っている点からも、日本国内の製造に向いている。
既にJパワー、大阪大学大学院、アルバトロスの3者が模型を使った水槽実験を完了している。今回は新たな枠組みで小型実験機を製作し、国内海域で実証を行う。実証場所は未定。解析・設計手法の妥当性が確認されれば、25~26年頃に500~5千キロワット級の大型実証機の製作・実証を行い、32年頃までの商用化につなげる。
日本は遠浅海域が少なく、深い海域でも導入余地が大きい浮体式洋上風力への期待が高まっている。
電気新聞2023年5月31日
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