プラスチック由来の水素で動く燃料電池の前で看板を掲げる関係者
プラスチック由来の水素で動く燃料電池の前で看板を掲げる関係者

 大和ハウス工業と東急ホテルズ、川崎市は5月30日、川崎市でプラスチック由来の水素をエネルギー利用する世界初のプロジェクトを開始すると発表した。昭和電工の川崎事業所で使用済みプラスチックから製造した水素を、再開発地区にあるホテルへ供給。このホテルに東芝エネルギーシステムズ製の燃料電池を設置し、電力・熱需要の約30%を賄う。このほど大和ハウスが開発する街区の1次開発が完了し、30日に現地でセレモニーを開いた。

 今回のプロジェクトは、多摩川を挟んで羽田空港の対岸にある再開発地区「キングスカイフロント」で実施するもの。この地区は先端医療・環境関係の企業や研究機関が集積する国際的な拠点に位置付けられている。

 その中で今回、大和ハウス工業が開発する「A地区」と呼ばれるエリアで水素・燃料電池を利用するホテルと研究施設2棟が完成した。

 水素は昭和電工川崎事業所で使用済みプラスチックを分解・ガス化して製造。これを約5キロメートルのパイプラインを通してホテルへ供給する。ホテルには東芝の純水素燃料電池「H2Rex」を設置し、水素を電気と湯に変換して施設内で利用する。

 「H2Rex」の出力は100キロワット。5分以内という短時間で起動したり、出力を自在に変えたりできる。ホテルで使用する全エネルギー量のうち約30%を賄える見込みだ。

 セレモニー後に記者の質問に応じた福田紀彦・川崎市長は「水素はこれまで産業分野で融通されてきたが、(ホテルという)生活の場で利用するのは大きなインパクトがある」と指摘。大和ハウスの石橋民生副社長は「この地区から水素利用を全国や世界へ発信するモデルとなるよう、モニタリングしていく」と述べた。

 プラスチックを分解して水素を製造する場合、二酸化炭素(CO2)も発生する。昭和電工はCO2をそのまま大気に放出せず、ドライアイスなどに再利用している。

 環境省は、同社の事業を使用済みプラスチックを原料として「低炭素水素」を供給するモデル事業として採択している。

電気新聞2018年5月31日