国際協力銀行(JBIC)はインドネシアの国営肥料大手ププックと組んで、国際間アンモニアサプライチェーンの拡大に乗り出す。22日に両社の協力推進を目的とした覚書(MOU)を結んだ。ププックと日本企業がアンモニアの長期引き取り契約を結ぶことも念頭に、JBICが事業資金の供給体制を整える。将来的な発電利用も見据え、日本が安定的にアンモニアを調達するための取り組みが進んでいる。

 ププックは主にインドネシア国内向けに、肥料用アンモニアを年間1千万トン程度生産している。従来は石炭を改質したグレーアンモニアが主流だったが、最近では再生可能エネルギーによるグリーンアンモニアの製造を計画。将来的なクリーンアンモニアの輸出を目指す。

 JBICはププックに対して、融資対象事業の収益を返済金の原資とする「プロジェクトファイナンス」を提案。ププックのアンモニア製造・販売を長期間安定させるのが目的で、日本企業と15年間などの長期供給契約を結ぶといったプロジェクト案も示す。

 ププックは東洋エンジニアリングと共同で、使用していない既存のアンモニアプラントでグリーンアンモニアを生産するための事業化調査(FS)を実施している。早ければ2025年にも数万トン規模のグリーンアンモニアを製造し、輸出できるとみられる。まずは肥料用としての輸出が中心となる。

 現在流通する化学用途のアンモニアは、基本的にスポット契約で取引される。長期契約を通じたアンモニアの引き取りは、まだ世界でも実績が少ない。JBICの後押しでププックと日本の電力会社などが長期契約を締結できれば、将来的な燃料アンモニア供給の安定化につながると期待される。

電気新聞2023年5月23日