再エネを軸に「地域循環共生圏」を整備する動きが活発化し始めている

◆間伐材生かしバイオ発電/太陽光機器産業がてこに

 再生可能エネルギー関連産業を軸に、「地域循環共生圏」をつくり出す自治体の事例が増えてきた。岡山県真庭市は、地域の間伐材を燃料に用いたバイオマス発電所を稼働させ、木質ペレットの製造や輸送業を活性化。売電事業の効果もあり、地域内総生産は2018年に10年比で1割以上伸びた。環境省はこうした自治体の成果に着目し、第6次環境基本計画の策定に向けた基礎検討会合で情報を共有している。再エネを地域の経済成長に結び付けた事例として注目を集めそうだ。

 地域循環共生圏は、地域資源を用いて経済成長を目指す構想。環境問題の解決につながるほか、自立した地域をつくるものとして、第5次環境基本計画にも盛り込まれている。

 地域循環共生圏に再エネを活用する取り組みは、環境省が昨年末に立ち上げた第6次環境基本計画の策定に向けた基礎会合で取り上げた。

 2月の会合では、再エネを主軸に地域内総生産を高め、所得も向上させた事例を報告。地域内総生産は域内で生産された付加価値額を示す数値で、真庭市は地域内総生産が10年の1337億円から18年に1501億円まで高まった。

 熊本県水俣市では、全国的な太陽光発電の広がりを追い風に、受電盤、制御盤などを扱う電気機械産業が好調に推移。地元企業が参画する太陽光発電事業も順調に立ち上がり、地域内総生産は10年の725億円から18年には811億円まで増えた。

 真庭市のバイオマス発電は、処分費を支払っていた間伐材や端材を有効活用して発電している。売電収入は年24億5千万円で、利益は地元事業に還元する仕組みにしている。発電事業での雇用も創出することにより、街の活性化につながっている。

 環境省の会合では、価値総合研究所の山崎清執行役員が、再エネを起爆剤とした地域経済の再生を提案。特に地方における再エネポテンシャルの高さを踏まえて、「地域循環共生圏における再エネの導入は大きなビジネスチャンスになる」とも示した。

 環境基本計画の策定に向けた本格的な会合は23年度から始まる。西村明宏環境相は、「地域に貢献する再エネの導入は重要」としている。脱炭素先行地域の取り組みと合わせて、地域循環共生圏でも再エネの導入支援に力を入れる方針だ。

電気新聞2023年5月10日