日立製作所は23日、日本の電力会社向け高圧変圧器とガス絶縁開閉装置(GIS)の製造拠点を、2025年度から日立エナジーの海外工場に移すと発表した。日本独自の規格や要望に応じた特殊な仕様ではなく、世界で流通する製品を導入して電力会社の設備投資抑制を支援。同時に変電機器事業の採算性向上も狙う。

 日立が国内で手掛ける電力流通事業を、海外で事業展開する日立エナジーと段階的に統合。変圧器は中国の重慶市と中山市の2工場、GISは中国アモイ市の工場で製造する。茨城県日立市の国分工場は製造をやめ、システム全体の設計などを行うエンジニアリングサービスの拠点に切り替える。

 日本向けの変電機器は、国際電気標準会議(IEC)の規格に加えて、電気学会・電気規格調査会(JEC)の規格を満たすことが必要で、製品コスト増の要因となっている。日立は電力会社と協議しながら、IEC規格の製品を提案していく。

 電力会社は高度経済成長期に建設された経年化設備の大量更新期を迎えているが、レベニューキャップ制度の導入により投資できる資金は限られる。欧米やアジアなど多くの国に提供する量産品を導入することで、投資を抑えられる。

 製造拠点を中国に移すに当たり、米中摩擦などでサプライチェーンの混乱が生じた場合は、別の生産拠点から製品を送って対応する。国内の製造設備については、減損処理を行った。現在、製造に携わっている人員は日立グループ内で吸収する。電力会社への営業は今後も日立が担当する。

 日立グループが注力する高圧直流送電(HVDC)システム事業は、23年度下期に統合する予定。世界的に展開するサービスを日本市場でも提案していく方針だ。低圧の変圧器や一般産業向け製品は、引き続き国内で製造。系統保護制御関連事業は統合の対象外とする。

電気新聞2023年5月24日