講評に聞き入る参加者
  

 東京電力ホールディングス(HD)が、データ活用に関する取り組みを活発化させている。3月上旬に開催したデータ分析事例を共有する社内イベントでは、ターゲットを絞ってサービスをPRする試みや、スマートメーターのデータを需要予測に生かす取り組みなどを紹介。データ分析に関心を持つ社員が参加し、自主的に活動するグループも発表を行った。講評した同社の関知道常務執行役、大阪ガスDX企画部ビジネスアナリシスセンターの岡村智仁所長からエールが送られた。

 イベントは都内の会場とオンラインで開かれ、3チームが事例を発表した。東京電力エナジーパートナー(EP)のチームは、データ抽出に多大な時間がかかるという問題の解決に取り組みながら、様々な分析を行っていると報告。顧客の属性やウェブの閲覧履歴などをAI(人工知能)に学習させ、興味のありそうなサービスを個別に案内するといった事例を披露した。

 東京電力パワーグリッド(PG)のチームは、スマートメーターで取得した30分単位の電力使用量データを活用し、需要予測の精度向上に取り組んでいる現状を紹介した。設備の点検データを使った劣化診断などの事例も発表した。

 講評した関常務は、「データ分析は、データを集めてクレンジングする時間が8割を占める」と述べ、地道にデータ化を進めることが大きな成果につながるとの認識を示した。

 最後に発表したのは、部門の壁を越えて集まった社内有志チーム「COMMUNITY BASED(コミュニティー・ベースド)」。担当業務の枠にとらわれずデータ分析を試み、電気自動車(EV)急速充電の事業化に向けた検討状況を紹介した。

 データ活用はあらゆる事業で重要な課題となっている。関常務は「全社員がデータを語れるようになってほしいと願っている。皆さんの活動をどんどん広げたい」と積極的に支援する考えを述べた。大ガスの岡村所長も「社内にこういう人たちが増えると、会社は強くなる」と評価した。

電気新聞2023年5月10日