スマートメーターから取得した電力データは様々な活用方法が見込まれる

 全国約8千万台のスマートメーターから取得した電力データの有償利用が、10月に始まる。電力データを使ったサービスを提供する事業者は、電力データ管理協会を通じて匿名化された統計データや、本人同意を得た個別データを取得できる。当面は1日前のデータが対象。東京、中部、関西エリアを手始めに、2024年11月までに全国10エリアへの展開が完了する予定だ。電力データを生かした社会課題の解決や、新たな価値の創出につながると期待される。

 22年4月に施行された改正電気事業法により、電気事業者以外を含め、一般送配電事業者が保有するスマートメーターのデータを利用することが可能になる。データは国の認定を取得した電力データ管理協会を介して一括で入手する。現在は実証期間中で、一般送配電事業者のシステム開発が完了し次第、順次本格化する。

 10月の東京、中部、関西エリアを手始めに、まず1日前の30分単位のデータが翌日昼頃に利用可能になる予定。その後、25年3月頃からリアルタイムデータに順次対応していく見通しだ。

 データの提供を受ける事業者は、電力データ管理協会に入会し、個人情報保護の要求水準を満たす必要がある。統計データのみを利用する場合の年会費は20万円。個別データも利用する場合は、年会費50万円に加えてデータ量に応じた利用料がかかる。

 現在の会員数は、データを提供する一般送配電事業者10社と、利用する民間企業7社。後者には東京電力パワーグリッド(PG)や中部電力、関西電力送配電などが出資するGDBL(東京都千代田区、平井崇夫社長)、東京大学発ベンチャーのヒラソル・エナジー(東京都文京区、李旻代表取締役)、ENECHANGE(エネチェンジ、東京都中央区、城口洋平CEO)、東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)などが名を連ねる。

 電力データは高齢者宅の見守りや防犯対策、スマートホームといった様々な分野での活用が見込まれる。例えばGDBLは、二酸化炭素(CO2)排出量や再生可能エネルギー導入状況を「見える化」したり、需要家の省エネ行動を促したりするサービスを提供する予定だ。このほか、災害時に一般送配電事業者各社から国や自治体にデータが提供される仕組みも整えられる。

電気新聞2023年5月12日