AIに代表されるテクノロジーの進化が消費者の行動を大きく変えようとしている。消費者は、強い関心を持たない商品の選択をAIなどのテクノロジーによる合理的・効率的な判断に任せ、より興味・関心のある商品を吟味して買うことに集中していくだろう。電力小売りも、電気が「無関心商材」となることを前提に、その中でも収益を上げられるポジションを取り、そして電気を利用する新しい家電や、その利用による経験のような、消費者の強い関心を集める商品を販売するという、戦略の変化を求められるのではないだろうか。新しい電力小売りビジネスの在り方を考えてみたい。
 

ECが急拡大。さらにAIで膨大な情報から最適な商品が選べるようになる

 
 近年のテクノロジーの進化に伴い、消費者はリアル店舗での購買からインターネット上での購買へと購買の場を大きく変化させてきた。多くの消費者がアマゾン(Amazon)や楽天市場といった電子商取引(EC)サイトを活用している。ECサイトでの購買は、リアル店頭のように、在庫状況により欲しい商品が買えない不便さや、重い商品を自宅まで運ぶ手間がないなどの大きなメリットで消費者の支持を集めている。経済産業省が発表した「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」=図=によると、ECサイトでの物販は年間8兆円にも上り、さらに急速な拡大を続けている。
T&T小売りビジネス(1)

 一方で、ECサイトでの購買はリアル店舗での購買に比べ、膨大な情報量を自分で判断して最適なサイト・商品を選ばなければならない、一定程度のITリテラシーが必要、という弱点も抱えている。この弱点を一挙に解決しようとしているのが、AIエージェントなどを活用したIoTコマースの登場である。

 AIエージェントとは、(1)人の言葉を聞いて内容を解釈し、(2)必要な情報を収集し分析し、(3)適切な反応を返す――という一連の機能を持つソフト・ハード群。グーグル(Google)の「アンドロイド・ナウ(Android Now)」やアップル(Apple)の「Siri」、アマゾンの音声認識デバイスである「アマゾンエコー(Amazon Echo)」とそのエンジンである「アレクサ(Alexa)」など、巨大テクノロジー企業がこぞって開発に取り組んでいる。アマゾンエコーは2015年の発売以来、現在までに3300万台が出荷され、今後も伸びが期待されている。日本でも2017年11月、販売を開始した。

アマゾンのAIスピーカー「アマゾンエコー」
アマゾンのAIスピーカー「アマゾンエコー」

 AIエージェントはスマートフォンにおけるアプリのように、サードパーティーが機能拡張できる仕組みを備えている。例えば、アマゾンアレクサの「スキル(Skill)」には、天気予報やニュース読み上げ、百人一首読み上げなどの機能を選んで追加できる。この拡張機能に消費者の過去の購買履歴や趣味趣向、価格に合わせて最適なものを自動で選択するエンジンを搭載すれば、消費者はAIエージェントに話しかけるだけで、インターネット上の膨大な情報に惑わされることなく、自分の欲しいものを最適な価格で、しかも簡単に購入することができるようになる。
 

強い関心がない商材はAIが自動発注

 
 さらに消費者が強い関心を持たない商材については、AIエージェントに事前に条件を伝えておけば、話し掛けるという行動すらせずに、自動で発注してくれるようになるかもしれない。

 このような無関心商材については、自動購買のプロセスに組み込まれるため、従来の消費者に向けたマーケティング施策は意味を持たなくなっていくだろう。そして電気は、どの電力会社から買っても同じ電気が届く限り、無関心商材になる可能性は高いのではないだろうか。

【用語解説】
◆無関心商材
消費者が製品・サービスを積極的に吟味しない、比較検討して選択しない商材。

◆IoTコマース
顧客がPC・モバイルを立ち上げることなく、AIエージェントのようなIoTデバイスで購買を行うこと。

電気新聞2018年2月19日