LAES設備のイメージ図(英ハイビュー提供)

 

再生可能エネの出力変動調整に期待

 
 住友重機械工業は液化空気エネルギー貯蔵(LAES)技術の事業化を加速させている。再生可能エネルギー電源の出力変動を調整する役割などが期待され、慣性力を提供できる点は系統安定化の観点から大きな強みとなる。1月には事業化への大きな一歩となる実証を広島ガスと開始。2025~26年度に本格展開の段階に入り、30年度にはエネルギー環境事業の柱に育て上げる方針だ。(矢部八千穂)

 LAES技術は、余剰電力で空気を圧縮・冷却し、液体にしてタンクにためることで蓄電する。電力が必要な時は液体空気を加熱して気体に戻し、空気タービンを回して発電する。

 英国ハイビューエンタープライズが開発し、「クライオバッテリー」の名称で展開。住友重機械は再エネの導入拡大に伴う電力貯蔵の重要性の高まりを見据え、20年に同社へ出資した。LAES技術に住友重機械のエンジニアリング能力を組み合わせ、共同で事業化に取り組んでいる。

 リチウムイオン蓄電池や揚水発電設備が得意とする領域の「中間域をうまくカバーできる」。住友重機械エネルギー環境事業部事業開発推進部の伊藤一芳部長は、LAES技術の特長をこう説明し、再エネ電源の導入拡大における有用性を強調する。

 数万~数十万キロワットの出力と数時間~数日の連続運転に対応しており、電力の大容量貯蔵と長時間供給が可能だ。小規模な蓄電池と大規模な揚水発電が苦手とする領域を補うことができる。
 

系統安定化も

 
 慣性力の提供もLAES技術の大きな強みの一つ。慣性力を持つ大型タービンを回して発電するため、周波数の低下を抑えることができ、電力系統の安定化に寄与する。

 また、LNGの冷熱、工場排熱といった外部の未利用熱エネルギーを利用して充放電効率を高めることができる。圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)などと比べて省スペースで、都市部にも導入しやすい。30~40年という設備寿命の長さ、大規模化が容易といった点も競争力となる。

 広島ガスとの実証では、廿日市工場(広島県廿日市市)敷地内に実プラントを設置。24年に運転を始め、設計や建設時の法令・規格対応、LNGの冷熱利用による効率改善効果などを確かめる。実際に発電した電力を卸電力市場と需給調整市場、容量市場で販売しながら、電力取引に関する知見も蓄える。
 

主力化目指す

 
 実証の結果を基に技術を確立し、25~26年度頃からの本格販売を目指す。主に太陽光発電や風力発電を手掛ける事業者が、自社設備の需給調整に活用することを想定。まずは年間1~2件の受注を積み重ね、30年度にはエネルギー環境事業部の売上高の3割程度を占める主力事業に成長させたい考えだ。

 伊藤部長は、再エネを有効活用するには様々な技術の長所を組み合わせることが必要と指摘。LAES技術の確立により「再エネ主電源化社会と当社事業の双方に寄与していきたい」と意気込む。

電気新聞2023年3月15日