明電舎が、小規模揚水発電所の事業化を検討している。下池に既設ダムを活用して建設費を抑える。出力は数万キロワットを想定する。従来の揚水は原子力発電所の夜間電力でくみ上げるという想定だったため数十万~100万キロワット規模だが、再生可能エネルギーの出力変動に対応するには数万キロワットが適切とみる。国土交通省が推進するハイブリッドダムの対象を候補地の一つとして想定している。再エネ普及の後押しにつながる試みになりそうだ。

小規模揚水は、科学技術振興機構(JST)の低炭素社会戦略センター(LCS)が提唱している。太陽光発電の調整に小規模揚水が貢献できると主張。2021年に出した提案書では、既設の多目的ダム約2700カ所のうち931カ所が小規模揚水の下池に適しているとした。22年度には建設費を約33億円、発電コストを1キロワット時当たり18円と試算した。下池に利用する既設ダムの規模によっては複数の上池をつくることが可能としている。
明電舎はJSTの提案に賛同し、同社にとって初の揚水向け発電機納入を目指す。これまで大規模揚水は大手重電メーカーが納めてきたが、中小規模なら一般水力で培った知見を生かせる。ダムの水位が変動しても効率よく運転できるように、定速と可変速を切り替えて運転できる技術を開発中だ。
小規模揚水の建設候補地の一つに、国交省が主導するハイブリッドダムの対象を想定する。ダムの治水機能と発電の容量を融通する仕組みで、国が保有するダムの発電量増加が目的の一つだ。発電設備の増強では揚水も候補になり得るとみる。明電舎は国交省が主催するサウンディング(官民対話)に参加している。対話結果は年度内にまとまり、23年度に対象ダムで事業化調査(FS)を行う予定だ。
ハイブリッドダムでの発電量増加に向けて、明電舎の増子利健・水力事業推進本部長は「課題は技術よりもスキーム面」と指摘する。水力でのオフサイトPPA(電力購入契約)などの手法を活用し、民間の投資を促すのが必要と指摘する。明電舎は機器納入だけでなく、揚水発電事業への参画も視野に入れ、市場の活性化を狙う。
経済産業省・資源エネルギー庁も22年度補正予算で10億円を計上し、揚水の新規開発可能性調査を支援する。JSTの提案を踏まえつつ、エネ庁の担当者は「小規模揚水は既存の設備と技術を使える」と期待を込める。
電気新聞2023年1月25日