2年ほど前に「EVは普及するか!?」というタイトルで当欄連載を執筆させて頂いた。その際、街中でEV(本稿ではいわゆる電気自動車をこう表記する)をほとんど見かけないと書いた。現在はどうだろうか。最近は頻繁にクルマに乗っているが、私の起居する東京23区内ではクルマで出掛けると、かなりの確率でEVを見かけるようになった。国内外の完成車メーカーによるEVのテレビCMも頻繁に見る。この2年の間にEVを取り巻く環境はだいぶ変わったようだ。本連載では、EVを取り巻く状況を私というユーザー目線とエネルギーの側面から報告する。
 

自分自身でも体験

 
 私はIoT(モノのインターネット)技術を活用して分散エネルギー資源を活用する研究を生業としている。研究室の実験用EVとは別に、自分自身でもEVを購入して一ユーザーとしてUX(ユーザー体験)を蓄積している。このため最近は努めてクルマで外出するようにしているが、外出すると1台から多い時は3台くらいEVを見かける。多くは米テスラ社のモデル3というタイプであり、同社のEV出荷台数(グローバル)のニュースに触れるたびに、納得感が湧いている。

 電気とモーターで走行する自動車でも、少し前までは蓄電池で走行するBEV(Battery EV)が良いのか、水素を1次エネルギー源とする燃料電池車(FCV、Fuel Cell Vehicle)が良いのか、という議論があり、私自身はこれを未だ決着していないテーマと考えているものの、商業的な乗用車製造販売の世界では、BEVが一歩も二歩もリードしていることは間違いなさそうである。

 私のEVは、ホンダのe(Advance)という車種である。蓄電池容量は非公表ながら約35キロワット時のようで、メーカー発表の航続可能距離は259キロメートル(WLTCモード)である。EVは走行距離に関係する電池残量(SoC)がとても話題になる。私も以前はそうだったが、乗っているとだんだん相場観のようなものができ、さほど気にならなくなってくるのが現実だ。私のEVは航続可能距離が短いのだが、このSoCならこのくらいの距離は大丈夫、といったようにだ。
 

自宅電気代に吸収

 
 ガソリン車では、燃費を大きく左右する渋滞がとても気になった。しかしアイドリングのないEVでは渋滞はさほど電費に関係しないようだ(コロナ禍もあって大渋滞を経験していないからかもしれない)。一方、EVではエアコンの使用が電費を大きく左右する。図1は、私のEVの電費の変化である。エアコンによる冬季の暖房が電費に影響している様子がご覧いただけよう。ガソリン車では燃費を良くするのに、アクセルの踏み方だのスピードの維持などといろいろ言われたが、モーターと回生ブレーキのEVではそのような工夫の余地はあまりないように思える。また、自宅の電気代に合算されてしまうため、電費のコストがあまり気にならないのも事実だ。


 さて、充電行動についてもご紹介する。図2は、典型的な充電口の配置例である。国産車の場合、充電口は急速充電やV2H動作に対応可能なCHAdeMO規格コネクターと、AC200Vによる充電だけの普通充電コネクターの2つが装備されている。そしてそれらは、車両の先端部(ボンネットの前縁部)、運転席側フェンダーに普通充電コネクター/助手席側フェンダーにCHAdeMOコネクター、もしくは、車両の右後ろなどの後部に装備されている。

 EVは基礎充電と呼ぶ自宅での充電も多い。この場合、自宅車庫の構造と充電口の位置が問題になる場合がある。我が家もそうだが、東京23区内などでは、建物の一部をくりぬいたような箱型の車庫がかなりある。EVを車庫に入れると充電口にアクセスできない場合もあり、これはガソリン車にはなかった問題だ。

 高速道路のサービスエリアなどでの急速充電は経路充電と呼ばれる。私自身は、この経路受電は正直言ってやる気になれない。面倒くさがりという性格の問題もあるが、最近は先客も多いようで、ただでさえ所要時間が不確実なクルマでの移動の不安材料が増えてしまうことも理由である。前述の車庫形状に加え、マンションなど基礎充電に課題がある施設も多いが、より広範な基礎充電の実装がEV普及の大きなキーであろう。

【用語解説】
 ◆SoC State of Charge、電池充電率と呼び、%で表される。スマホの電池残量表示と同じようなものであるが、スマホ同様に表示精度は良くないと言われている。

 ◆普通充電口 家庭用の接地付きAC200Vを供給するだけで充電可能な口であり、一般的には3キロワット程度の充電電力と言われている。EV自身に搭載されている整流器を使用する。

電気新聞2022年8月15日