NTTは、電話やインターネットの通信回線を敷設している地下管路を利用し、水素を大量輸送する構想を描いている。管路内に水素用配管を通す「2重配管方式」で安全性を確保する。既に全国に張り巡らされている通信用管路を活用できれば、水素の輸送コストや用地取得といった課題の解決につながると期待される。
通信用管路は光ファイバーケーブルの普及に伴い、現在では6割程度しか使われていない。電話やインターネットの通信回線はかつてメタルケーブルが主流だったが、ガラス製で細い光ファイバーケーブルに置き換わった。同じ太さの管路により多くの回線を収納できるようになったことで、余剰スペースが生じている。
今回の構想は、通信回線が入っていない管路に水素用配管を敷設することで、水素の大量・安定輸送と通信用管路の有効利用を同時に達成する狙いだ。
NTTは昨年12月~今年1月、NTTアクセスサービスシステム研究所(茨城県つくば市)で水素輸送の実証に取り組んだ。通信用管路(内径80ミリメートル、長さ約300メートル)の内部に、2種類の内径の水素配管を敷設。水素が触媒と触れたときに熱を発する仕組みを活用して、水素の漏えいも検知できるようにした。実際に水素配管の中に水素を流して安全性を検証した。
7月末からは同社子会社のNTTアノードエナジー(東京都港区、岸本照之社長)が、産業技術総合研究所、豊田通商と共に福島県で同様の実証実験を進めている。水素漏えい検知や異常予兆検知などの研究をさらに深掘りするほか、漏えい水素に着火した場合の火炎挙動調査、コスト算定なども実施する予定だ。同実証事業は来年1月まで行う見通し。
NTTアクセスサービスシステム研究所で水素輸送の研究を手掛ける、シビルシステムプロジェクト・社会デザイン戦略グループの泉俊光主任研究員は「これまでの研究で、水素パイプラインは通信ケーブルと同じように通信管路内に設置できることが分かった」とコメント。水素社会実現に向けて「今後は安全性が担保できるか、さらに検証を詰めていきたい」と話す。
電気新聞2022年10月11日
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