前回、デジタル通貨を活用したピア・ツー・ピア(P2P)電力取引における決済方法の現状を紹介した。今回は関西電力が実際に取り組んだデジタル通貨をP2P電力取引に適用した実証実験を紹介するとともに、今後の動向や制度面の課題を踏まえた将来の見通しについても述べる。要約すると、デジタルデータの取引や決済にデジタル通貨は非常に親和性が高く、法的な整備は発展途上ではあるものの、電力取引ビジネスへの適用は今後も順調に進むものと考えられる。

 当社は、デジタル通貨フォーラムの電力取引分科会において、2022年3月9日から14日にかけて、実証実験を実施した。電力取引で用いた模擬デジタル通貨を店舗決済にも活用する日本で初めての試みで、当初目的を達成し成功裏に終了した。本実証実験は、デジタル通貨の将来的な実用化を見据え、P2P電力取引におけるデジタル通貨決済の実現性や、デジタル通貨の小売店舗での有用性を検証する目的で実施されたものである。P2P電力取引の実用化や、電気取引以外の環境価値取引の普及を通じて、再生可能エネルギー電源の拡大と持続可能な社会の実現に貢献することができる点においても、本実証実験の意義は大きい。
 

実装への課題確認

 
 今回利用したデジタル通貨は、デジタル通貨フォーラムにおいて想定している模擬デジタル通貨(仮称DCJPY)。日本円と完全に連動する円建てのデジタル通貨として設計されており、当面は、民間金融機関(銀行)が発行主体となることが想定されている。実証実験では、当社とBIPROGY社が共同で開発した電力取引のプラットフォームとディーカレットDCP社が開発したデジタル通貨プラットフォームを連携。電気や環境価値の取引ビジネスにおいて使用したデジタル通貨を、小売店舗や商業施設、公共交通機関などでの決済に利用できるかどうかを検証し、今後の実装に向けた課題を確認した=図


 電力取引においてデジタル通貨を活用するメリットは、正確性やセキュリティー面の向上にとどまらない。デジタル通貨は、従来通貨の金銭的価値に加えて、BC技術の特性を利用することで、取引された電力が再生可能エネルギー由来であることの記録や公示が可能となる。よって、将来的に環境価値を活用したグリーンファイナンスなど新たなエネルギービジネスの開発が期待される。なお、今回利用した模擬デジタル通貨(DCJPY)は、改正資金決済法で整備された「電子決済手段」ではなく預金として整理され、金銭の移転は銀行の為替行為として行われるものである。
 

アプリ要件を検討

 
 今後の展開としては、デジタル通貨の商業・サービス利用に関する新たなビジネスモデルの検討に加え、サービス利用者アプリの具体的要件について検討を進める予定である。今回の実証実験は、実用化に向けた第一歩であり、結果を踏まえて技術的・法的な課題などを改めて明確にし、解決を図っていく必要があると考えている=表。今後も実用化を視野に検討を継続する予定である。

【用語解説】
 ◆デジタル通貨フォーラム ディーカレットDCP社が事務局を務め、80社以上の企業・団体・関係省庁などが参加する日本におけるデジタル通貨の実用性を検討する取り組み団体。電力取引分科会の他にも、デジタル通貨活用ユースケースごとに10の分科会が設立されおのおの検討を行っている。

 ◆デジタル通貨 DCJPY デジタル通貨フォーラムが取り組んでいる共通領域と付加領域の二層構造を持つデジタル通貨。DCJPYの利用者は、デジタル通貨を利用するためのアカウント(口座)を開設し、この口座においてデジタル通貨を保有し、利用することになる。

(全2回)

電気新聞2022年8月8日