東芝ESSが提供するジオポータブルのイメージ

 

可搬型や数百キロワット規模も

 
 地熱発電機器のメーカー大手3社が中小規模案件に力を入れている。東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は可搬性の小型設備で機動的に提供。富士電機はバイナリー発電の商材で出力の幅を広げ、下限を現状の5千キロワットから数百キロワットまで拡充する方針だ。三菱重工業は設計標準化により採算性を高める。設備を中小型とすることで蒸気を柔軟に利用しやすくなるとともに、建設期間が短くなる。特に国内では、系統接続の制約や法制度の面から大型開発が難しい事情もある。(匂坂 圭佑)

 東芝ESSは小型地熱発電設備「ジオポータブル」の販売を推進している。蒸気タービンと発電機がセットになっており、運搬、設置がしやすい。大型地熱発電の建設で、先に掘削し終えた「開発待ち井戸」に設置し、全ての井戸がそろったら撤去する手法を提案している。11月にも営業運転する予定のエチオピアのアルトランガノ坑口地熱発電所(5千キロワット)に適用した。

 井戸の蒸気量が豊富ながら設備の劣化によって発電量が減少した場合にも、ジオポータブルを生かせる。インドネシアで2021年に運転を始めたディエン小型地熱発電所(1万キロワット)は、余剰蒸気を使い切るためにジオポータブルを既設発電所に追加導入した事例だ。ジオポータブルは、この名称が付く以前も含めて5件の受注実績がある。

 富士電機はバイナリー発電方式の商材を充実させる。現状は5千~1万キロワットを提供するが、出力の幅を上下に拡充する方針だ。バイナリーで先行する海外メーカーに追い付くため、発電プラント事業本部の井岡高史・海外営業部長は「将来的に数百キロワット程度まで広げたい」と展望する。日本では系統連系に課題があるため、高圧系統に接続する2千キロワット未満に需要があるとにらむ。

 三菱重工は、熊本県で開発中の南阿蘇湯の谷地熱発電所(2千キロワット)と小国町おこしエネルギー地熱発電所(4990キロワット)で、標準化した設計を採用。開発期間を短縮し、小規模案件でも採算性を高める狙いだ。

 現状、国内では大型地熱よりも中小型地熱の方が開発しやすい。法規制に基づく環境影響評価の対象外となるほか、FIT(固定価格買取制度)の買い取り価格が高く設定されているからだ。また、電力系統の制約により、中小型でなければ接続できないケースもある。地熱発電機器メーカーが競争力を高めるには中小型への対応を強化することが重要になっている。

電気新聞2022年9月30日