水素混焼の実証を行う第二T地点

 三菱重工業は2025年度に水素50%混焼が可能なガスタービン(GT)を商用化する方針だ。23年度、高砂製作所(兵庫県高砂市)に3方式で水素を製造する「高砂水素パーク」を開設。既設大型GT実証設備で30%混焼を行った後、50%混焼へステップアップする。既に30年度までに大型GTでの水素専焼を実現する目標を掲げているが、EU(欧州連合)タクソノミーを受けて50%混焼を早期に実現する重要性が高まっており、開発を急ぐ。

 30%混焼用の燃焼器は開発済みで、これを組み込んだ商用電源が25年から米国ユタ州で稼働を始める予定だ。高砂製作所の大型GT実証設備「第二T地点」(56万6千キロワット)で23年秋に始める30%混焼の実証は、商用化を目前に控えた最終確認の意味合いを持つ。

 高砂水素パークは、第二T地点の隣接地に整備する。目玉は3種類の水素製造装置だ。一つ目は水電解装置。二つ目は固体酸化物燃料電池(SOFC)を逆反応させる原理の固体酸化物形電解セル(SOEC)。三つ目は、天然ガスに含まれるメタンを熱分解して水素を取り出す装置。様々な製造方法を見学者に披露して、水素社会の到来をアピールする。

 生成した水素は350本のボンベにため、配管を通じて第二T地点に供給する。ボンベの貯蔵量は合計3.5トン。30%混焼をすると1時間で使い切るという。50%混焼の実証前には貯蔵量を増強する計画だ。50%混焼は既存技術の燃焼器で実現可能としている。第二T地点で確認し、25年度に商用技術を確立する方針だ。

 EUタクソノミーにより、水素の50%混焼技術を早期に確立することが求められている。30年までに新設認可を受けたガス火力は、1キロワット時当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を270グラム以下に抑える必要がある。最新鋭ガス火力の排出量は同320グラムで、水素を30%混焼しても同280グラムと基準を上回ってしまう。50%混焼なら同250グラムまで下がる。

 EUは脱炭素の目標を前倒しする傾向があり、同様の動きが世界に広がることも考えられる。東澤隆司・エナジートランジション&パワー事業本部副事業本部長兼GTCC事業部長は、「50%混焼は早期に達成する必要がある」と気を引き締める。

 世界を見渡すと、現時点で商用火力の水素専焼計画は早くても40年頃のターゲットが多い。三菱重工は30年までに専焼技術を確立させる計画だが、東澤氏は「できるだけ早く専焼できる製品を作ることが大切」と開発をスピードアップする構えだ。

電気新聞2022年8月5日