紀の川蓄電所」のイメージ(提供元:関西電力、オリックス)

 関西電力とオリックスは14日、大型蓄電池を電力系統に接続し、調整力供出や余剰電力吸収に活用する「蓄電所」事業に参入すると発表した。和歌山県紀の川市に定格出力4万8千キロワット、定格容量11万3千キロワット時の設備を整備。電力が余っている時間帯は蓄電し、不足時は放電する。8月から蓄電池の設置工事を開始し、2024年4月の事業開始を目指す。建設費を含めた総投資額は80億円。蓄電池が得意とする速い調整力が求められる需給調整市場の入札を中心とした取引で収益を得る。

 大型蓄電池は今年の電気事業法改正で発電所に位置付けられた。再生可能エネルギーの導入拡大で調整力確保が課題となる中、系統に直結することで電力システム全体の安定化につなげる。関電、オリックスともに系統用蓄電池を事業として展開するのは初めて。需給逼迫時には日本卸電力取引所(JEPX)や容量市場の発動指令電源として供出する。

 蓄電池は関西電力送配電紀の川変電所構内に導入する。8千平方メートルの敷地に東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製リチウムイオン電池を64台設置。合計容量は一般家庭1万3千世帯分の使用量に相当する。「紀の川蓄電所」として事業を始める。

 関電とオリックスは昨年6月以降、蓄電池事業の検討を進めてきた。関電は分散型エネルギーリソースを活用したVPP(仮想発電所)事業の知見を生かし、蓄電所の多様な活用方法を探る。オリックスは国内で100万キロワット以上の再エネ設備を運営しており保守・管理のノウハウを提供する。電力系統の空き容量などを踏まえ、両社は後続プロジェクトを検討していく。

 蓄電所運営のため両社が折半出資する合同会社を6月1日に設立した。この合同会社が「紀の川蓄電所」の運営を担う。環境共創イニシアチブによる系統用蓄電池の導入支援に採択されており、補助金25億円を活用する。

電気新聞2022年7月15日