東日本(50ヘルツ)と西日本(60ヘルツ)で電力を融通するための周波数変換設備(FC)として、岐阜県高山市に建設された中部電力パワーグリッド(PG)飛騨変換所(容量90万キロワット)。2021年3月の運用開始以降、周波数の垣根を越えた電力の安定供給を支えている。21年度に続き22年度も夏冬の電力需給は厳しい想定だ。広域で融通し合う重要性が高まる中、保守拠点となる中部電PG飛騨電力センターは日々の巡視や点検を担い、安定稼働に全力を尽くしている。(西村 篤司)


 飛騨変換所は、東京電力パワーグリッド(PG)が長野県側の新信濃変電所(朝日村)に増設した交直変換設備と合わせ「飛騨信濃FC」として運用する。両設備間は亘長89キロメートルの直流幹線でつなぎ、周波数の異なる東西エリア間の電気を融通している。飛騨信濃FCの運開で、日本国内のFC容量は従来の120万キロワットから210万キロワットに増強された。

日々の保守に努める飛騨電力センターの洞氏(写真はサイリスタバルブがある交直変換棟)

 飛騨変換所が建設されたのは標高1085メートルの山間部。交流を直流に変換する「サイリスタバルブ」が設置されている交直変換棟や、電流の波形を整える「フィルター」、スイッチの役割を担う「ガス絶縁開閉装置」などで構成される。

 現地は無人対応で、中部電PG基幹給電制御所が遠隔で常時監視を行っている。保守を担う飛騨電力センターは、飛騨変換所から車で1時間超の距離。月に1回は現地で定期巡視に入り、機器の確認を行っている。同センター変電課の洞浩幸専任課長は「万が一のことがあると影響が大きくなる。日々の保守に万全を期している」。

 21年3月末の運用開始から約4カ月後の同年7月、交直変換の心臓部となるサイリスタモジュールの一部部品で故障が発生するトラブルに見舞われた。運用容量の半分にあたる45万キロワットが自動停止。「何の予兆もなく突然の出来事だった」(洞氏)が、すぐに同センターの所員が現地に出向き対応に当たった。

 メーカー社員と連携を図りながら迅速に故障部品を交換。故障発生の翌日には設備の健全性が確認でき、稼働を再開した。わずか1日で復旧したことについて、洞氏は「すぐに現地出向できたことに加え、直営でできる限りのことをやった。故障点を迅速に特定し、所員一丸となって対応できた」と分析する。

 周辺は豪雪地帯。冬の自然環境は特に厳しい。積雪2メートル、氷点下30度に迫る。屋外に設置されている機器は、この気象条件に耐えられる仕様に設計されている。昨冬は念には念を入れて、機器上に積もった雪を下ろす除雪作業を直営で実施。各班6~8人の4班体制でローテーションを回し、約1週間かけて除雪を行ったという。

 需給逼迫の懸念が拭えない中、構造的対策としてエリアをまたぐ広域運用拡大が求められる。飛騨変換所の重要性も高まっている。

電気新聞2022年6月27日

電気新聞は[安定供給の現場から・2022夏]と題する不定期連載で今夏の電力供給を守る現場の努力を紹介しています。