Kenesの市原パワー発電所で導入実証

 
 関電エネルギーソリューション(Kenes)の市原パワー市原発電所(千葉県市原市、LNG、11万キロワット)は、デジタル技術を活用した電気保安のスマート化に取り組んでいる。その一環として、四足歩行ロボットによるユニークな巡視点検の導入を検討。屋内だけではなく屋外も点検可能で、巡視回数も人力より増えるため、異常箇所の早期発見などが期待できる。

スマート保安の一環として導入した四足歩行ロボ「スクワッド」

 購入した米国製のロボットは、軍隊用語で「いつも一緒にいる仲間」という意味の「スクワッド」と名付けられた。幅0.5メートル、全長1.1メートル、高さ1.2メートル弱で、重量は約40キログラム。毎日6回の巡視は1回当たり1時間半かけ、屋外の格納庫から発進し、巡視後は自ら戻ってシャッターを閉める。

 味覚を除く“四感”で設備の振動や温度、ガス漏れなどを監視し、構内に設置したセンサーやカメラのデータと組み合わせて異常がないかを確認する。災害時には人が入れない場所も点検できる。今年度は実運用に向けた実証を行う計画で、定期検査終了後の21日から本格的に着手した。

 同発電所は2004年10月に運転を開始し、15年3月にKenesが取得。現在は、3人の所員と運転委託先の9人の計12人という少人数体制で運営している。安定運転の継続を前提に、保安力や生産性の維持向上を図るため、2年ほど前からスマート化の取り組みを開始した。

 運転監視では、運転データ可視化ツールや異常予兆検知ツールを導入。リアルタイムで故障モデルをパターン分析し、異常兆候が見つかると計画的に補修して計画外停止の低減を図っている。

パトロール回数を増やせるほか、屋内に加えて屋外も点検できる

 メンテナンス面では、発電所全域をレーザー計測した3Dデータや電子化した設備情報をクラウド上で運用管理。これによって、発電所に常駐しない工事会社が、遠隔地でも保全・保守計画を立てられる環境を構築した。

 同発電所の大森健二所長はスクワッドの導入について「日々の巡視頻度が1回から6回に増えることで、異常事象の発生を早期に見つけられる可能性が高まる」と説明し、「設備監視の信頼性をさらに高めていきたい」と意欲をみせている。

電気新聞2022年5月25日