成長への戦略を語る小島社長

 日立製作所は28日、2024年度まで3年間の中期経営計画を発表した。3年間合計で成長投資に1兆6千億円を振り向ける。IT基盤「ルマーダ」事業やデジタル、環境・エネルギー分野に充て、脱炭素技術や社会インフラ向けサービスを高度化する。調整後営業利益に近い評価指標となる調整後EBITA(利払い・税引き・一部償却前利益)は24年度に1兆2千億円まで高める。売上収益は、上場子会社を除いた状態で24年度に10兆円(21年度実績は約8兆3千億円)を目指す。

 ルマーダ事業では、子会社の米IT大手グローバルロジックとの連携を強化し、デジタルエンジニアリングサービスを拡充。同事業の売上収益は21年度の1兆6千億円から24年度に2兆7千億円まで引き上げる。

 電力・エネルギー、鉄道関連のグリーンエナジー&モビリティ事業では、研究開発に2100億円を投じる。電気事業者向け資産管理サービスや電気自動車(EV)充電ソリューションを世界で拡販する。同事業の売上収益は、21年度の2兆1千億円から24年度に2兆6千億円まで増やす。調整後EBITAは2600億円を目指す。

 エネルギー関連機器の拡販による二酸化炭素(CO2)排出削減貢献量は、24年度に年約1億トンと想定した。高圧直流送電(HVDC)システムや蓄電池駆動トラムなどでCO2の排出を抑える。

 30年以降の成長に向け、先端技術の開発にも投資する。水素をつくる大型水電解装置や次世代のがん治療技術などが対象で1千億円を準備した。先端技術研究の加速へ、ベンチャー企業に最大500億円を出資する。

 オンラインで同日会見した小島啓二社長は「グリーンエナジー&モビリティ事業は環境負荷低減の柱だが、他の主力2事業との比較では利益率で見劣る。しっかりてこ入れしていきたい」と強調した。ルマーダ事業については「デジタル人材の確保が重要。グローバルロジックのリクルート網を使って人材を集めたい」と話した。

電気新聞2022年5月2日