東日本大震災以降進んできた日本の需要側資源活用は、ここにきて拡大期かつ仕組みの細部設計期に入っている。需要側資源を取りまとめる「アグリゲーター」の役割も広がっていく見通しだ。そこで2回にわたって、需要側資源の一つ、デマンドレスポンス(DR)と、需要側資源を取りまとめて活用するVPP(仮想発電所)、アグリゲーターを取り巻く現状について解説するとともに、今後について展望したい。

 2011年に発生した東日本大震災後の供給力不足の中で、需要の削減を含む分散型電源のポテンシャルに注目が集まるようになった。一方でIoT(モノのインターネット)技術の発達により、様々な需要側資源とインターネットを介し、つながり、制御ができるようになってきた。
 

調整力へのDR活用

 
 電力制度においては、電力自由化の流れの中で16年度より発電・小売り・送配電のライセンス制がスタート。各エリアの周波数の制御や需給バランスの調整は当該エリアの一般送配電事業者が担い、必要な調整力は「調整力公募」を通じて調達されることになった。DRもアグリゲーターが取りまとめることにより、発電所と同様に、電源I’(イチダッシュ)というカテゴリーで調整力公募に参加している。


 DRで調整力公募に参加する需要家は、需給逼迫時に指令を受けた際に需要抑制を行うこと、および契約容量以上のDRを実施できるように設備や体制を整え待機することに対する報酬を得る。これらの需要家は、ほぼ同じ要件で24年度からは電力広域的運営推進機関(広域機関)が運営する容量市場(発動指令電源)における供給力の取引にスライドする形で引き続き市場参加することとなる。

 24年度向けの容量市場については、シングルプライスオークションで電源I’の3倍以上の価格が付いたことから、今まで費用対効果の観点から参加に二の足を踏んでいたが容量市場から市場参加を考える需要家がいる。一方、脱炭素の流れの中で自家発電設備自体を停止することから、DRへの参加を取りやめる需要家も出てきている。このため、最終的に発動指令電源に参加する電源がどの程度になるかはまだ不透明である。
 

これからの市場に対応

 
 容量市場に参加する場合、需要家へのDR発動指令は、開始時刻の3時間前に出される。このため、大半の需要家は発動時にアグリゲーターからメールや電話で連絡を受け、手動で運転員が設備を操作する形で需要抑制している。VPPに参加するための設備の制御技術が欧米に比べて日本は遅れている、といった声を聞くことがあるが、それは技術的な課題による遅れではなく、DRの市場参加に当たり短時間で応じる設備制御が必要な市場が今までなかったためだ。


 しかし、21年度から開始された需給調整市場、および22年度から開始されるFIP制度に参加する再エネの電力需給管理を見据えると、設備を制御できることはこれからの市場対応には必須となってくる。また、22年度からはアグリゲーター制度が導入され、アグリゲーターが本格的に電力需給の担い手として責任を果たす時代となる。需要家は自らの設備をアグリゲーターがマルチユースにより活用した運用実績をみて、優秀な実績を持つアグリゲーターを選ぶようになるだろう。我々、関西電力も需要家に選ばれるアグリゲーターになるべく、今後の電力制度の動向把握や設備制御の精度向上に向けて取り組んでいるところだ。

【用語解説】
 ◆VPP バーチャルパワープラント(仮想発電所)。需給逼迫時などに、需要家側が保有する設備を使って、あたかも発電所のような機能を提供することをいう。主に、(1)発電設備を使い逆潮流量を増加させる(2)自家発電設備の増出力もしくは蓄電池の放電により所内の需要の一部を賄い電力会社から購入する電力量を減らす(3)生産設備や空調などを止めて電力会社から購入する電力量を減らす――の3つの方法がある。

 ◆DR 電気は需要と供給のバランスが取れていることが必要。そのために上記の(2)(3)のように電力使用量を減らして発電所の出力向上と同じ効果が得られる需要抑制を行うことをDRという。

電気新聞2021年12月20日