電力中央研究所は、政府の第6次エネルギー基本計画における2030年度のエネルギー起源二酸化炭素(CO2)排出量の政府目標である6.8億トンについて、目標達成には約7千万トン分の追加削減が必要との研究結果を公表した。19年度の排出量10.3億トンから、日本経済の状況や省エネ進展、非化石電源拡大などの情勢変化を反映。第6次エネルギー基本計画の30年度政府目標が実現できるかについて、計量モデルを用いて定量的に検証した。その結果、30年度の排出量は7.5億トンとなり、政府目標には届かないとした。

 第6次エネルギー基本計画では、30年度実質GDPを660兆円とし、主要業種の活動量については粗鋼生産量9千万トン、紙・板紙生産量2200万トンなどと見込んでいる。また、30年度の省エネ量は6200万キロリットル(原油換算)程度とし、発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を36~38%とするなど野心的な目標を掲げている。CO2排出量については13年度比45.2%減の6.8億トンへと大幅に下げる目標だ。

 今回の検証では独自構築した計量モデルなどで、CO2排出に大きく関わる(1)経済成長の想定値・粗鋼生産量など主要業種活動量(2)省エネの進展(3)非化石電源の拡大――の3点を基に、19年度実績値から30年度CO2排出量の変化を計算した。

 (1)では経済成長により19年度より1.7億トン多くCO2が排出されるが、粗鋼生産量の減少など主要業種の活動停滞により19年度と比べ9千万トンの排出削減が可能になるとした。差し引き8千万トンの増を見込んだ。(2)では政府が評価した19年度時点の省エネ量1655万キロリットル(原油換算)から、30年度の省エネ効果を推計。30年度までに19年度比1.7億トンのCO2が削減できるとした。(3)では再エネの普及などにより同1.9億トンのCO2が削減されると試算した。

 検証の結果、30年度のCO2排出量は13年度比39.5%減の7.5億トンとなり、政府目標には不足が生じる。

 試算結果について、電中研社会経済研究所の間瀬貴之主任研究員は「経済成長によるCO2排出量を試算より低めに見積もったとしても、エネ基で示されている通りに原子力発電所の稼働や再エネが普及していなければ、さらに目標水準から増加する可能性がある」と強調した。

 その上で「政府が掲げた30年度の野心的な目標達成に向けて最善を尽くすことは重要。ただ、目標達成にこだわるあまり、エネルギー政策が経済成長を制約するようなことは避けなければならない」と述べた。

電気新聞2022年2月17日