中部電力は海外での事業展開を加速する。同社は昨秋策定の「中部電力グループ経営ビジョン2.0」で2021~30年度にグローバル事業で総額4千億円の戦略的投資を打ち出したが、そのほとんどを脱炭素関連へ振り向ける。4月1日付で立ち上げる「グローバル事業本部」では注力する領域に沿った戦略を実行するため「ユニット制」を敷き、同本部の「東京オフィス」も構える。欧州とアジアを軸に事業拡大を図り、30年以降に年200億円程度の利益貢献を目指す。

 戦略的投資4千億円のうち、再生可能エネルギー電源開発などの「グリーン領域」に2500億円と半分以上を充て、水素・アンモニア関連やCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)などの「ブルー領域」に1千億円、「小売・送配電・新サービス領域」に500億円を投じる。これらに「新技術領域」を組み合わせて最適なポートフォリオを形成。海外で得られる技術・ノウハウと、国内で培った強みを掛け合わせ収益基盤を強化する。

 注力する領域の明確化に伴い、グローバル事業本部では「クリーンエナジーソリューションズ」「脱炭素ソリューションズ」「コミュニティ&ソリューションズ」などの7ユニットで事業を展開する。東京には同本部のオフィスを構えて海外企業・政府機関などとの関係強化を図る。「東京で働く」選択肢を示すことで外部人材の積極登用につなげる狙いもある。

 グローバル事業に携わる要員は現行56人だが、4月の本部立ち上げ時には70人近くとなる見込みで、「遠くない将来に100人体制にしたい」(グローバル事業本部長就任予定の佐藤裕紀執行役員)とする。

 エリア別では、欧州は三菱商事と20年に共同で買収したオランダのEneco(エネコ)を戦略上のプラットフォームに位置付けるほか、東欧への拡大も検討する。アジアは21年に出資したベトナムの「ビテクスコパワー」を足掛かりとする考え。東南アジア諸国連合(ASEAN)各国のほか、オセアニア、中東での事業展開を視野に入れる。出資先の海外企業とは人事交流を図り、エネコ社員の中部電力での受け入れや、ビテクスコパワーに対する中部電力の技術系社員の派遣を検討する。

 中部電力はグループの持続的成長に向け、30年に国内エネルギー事業と「新成長・グローバル」などその他の事業の利益創出割合を1対1にしたい考え。グローバル事業はJERAと並行して、中部電力単体でも収益力を高めていく。

電気新聞2022年2月16日