経産省2審議会の議論を反映へ

 
 岸田内閣発足以来、経済産業省の脱炭素政策が2つの審議会を軸に議論されている。1つが産業構造審議会(経産相の諮問機関)に置かれた「経済産業政策新機軸部会」、もう1つが産構審と総合資源エネルギー調査会(同)合同のクリーンエネルギー戦略に関する会議体だ。ここでの議論を踏まえ、経済産業政策の新機軸、クリーンエネ戦略が策定される予定で、今夏の参議院議員選挙に向け、岸田文雄首相が掲げる新しい資本主義などに反映される方向だ。
 

危機感は強く

 
 現在、省を挙げて取り組んでいるのが「新機軸」の検討。日本経済の長期低迷を踏まえ、これまでの産業政策を抜本的に改める。日本は1990年代に世界のGDPの約18%を占めていたが「2050年には約3%という厳しい試算もあり、文字通り日本は小国となる」(萩生田光一経産相)と危機感は強い。

 新機軸はグリーン社会の実現も大きなテーマで、4日の議題となった。事務局は、大胆な民間投資を促すための戦略や必要な投資規模の提示、技術実装段階での支援の必要性を強調。脱炭素に向けたイノベーション、産業構造転換を促す新たな制度や、エネルギー転換を効率的に進める産業立地政策の必要性も掲げた。

 一方のクリーンエネ戦略は昨年12月に議論が始まった。首相が年頭会見で、検討会合に自ら出席すると表明してから官邸色が強くなったが、経産省が中心となって動く点は変わりない。新しい資本主義は、経済安保や格差是正などで構成されるが、首相は気候変動問題が最大の課題とする。その処方箋にクリーンエネ戦略が位置付けられるなど、曖昧だった戦略の立ち位置も明確化されつつある。

 産構審と総合エネ調の合同会合で、6月の策定を目指して議論される。需要サイドのエネルギー転換のほか、民間企業が新たな成長分野への投資を決断できるよう、より具体的な政府方針を定める意向。脱炭素に伴うコスト負担は最大限抑制するが、同時に社会全体で受け止める仕組みなども検討テーマだ。
 

相互に関連し

 
 ここで浮かぶのは新機軸とクリーンエネ戦略の違い。そもそもクリーンエネ戦略は産業政策にも関わることから、総合エネ調だけでなく、産構審を加えた合同会合で議論されることになった。新機軸では、脱炭素化で顕在化するエネルギーコスト上昇への対応など、クリーンエネ戦略で議論するようなテーマも掲げられた。両者の明確な線引きはなく、相互に関連して検討を進めるもようだ。

 新機軸検討の主体となっている経済産業政策局と、クリーンエネ戦略を見るエネ庁は両者の重複を認める。その上で、経済産業政策局幹部は「産業競争力をいかに維持・強化していくかという視点で議論してもらう」と説明。エネ庁幹部は「需要サイドのエネルギー転換はクリーンエネ戦略で、それを進めるための産業政策は新機軸だ」と両者の違いを例示する。

電気新聞2022年2月8日