アンモニアFSRUのイメージ図。奥はアンモニア輸送船

 関西電力は3日、アンモニアFSRU(浮体式貯蔵再ガス化設備)導入の検討を開始すると発表した。三菱重工業子会社の三菱造船(横浜市、北村徹社長)と商船三井が設備概要の検討を完了したことを踏まえ、3社で導入検討へ向けた覚書を締結。脱炭素燃料、水素キャリアとして有力視されるアンモニアの導入コスト低減を図る技術として3社でさらに評価を進め、世界各地での展開を検討する。

 関電は「ゼロカーボンビジョン2050」の中で、アンモニアを利用した発電を検討するとしており、そのサプライチェーンの検討を進めている。今回の3社の枠組みはそうした取り組みの一環と位置付ける。エネルギー事業者としての知見を生かし、FSRUの評価や周辺設備の基本設計などの検討を進める。

 FSRUは貯蔵タンクや再ガス化機能を搭載する船舶型の設備で、LNG向けに実用化している。商船三井はその運用実績を持つ。造船所で建造して設置箇所へ移動させるため、地上に設備を建設する場合と比べて工期短縮、コスト低減効果が見込まれる。

 アンモニアは現状、肥料の原料向けなど用途が限定的でLNGのように大量輸送されないため、そうした設備は実用化されていない。ただ、脱炭素へ向けて世界的な需要拡大が見込まれるため三菱造船と商船三井は機能面や経済性などの概略の検討を進めていた。

 三菱造船と商船三井は幅広いニーズに対応できるよう、ガスや液体といったアンモニアの供給状態やタンクサイズ、再ガス化方式の違いなど複数ケースで仕様を検討。設備内の電力を将来的にアンモニアで賄うことも含め検討し、コンセプトデザインを構築した。有事の際に自走する能力も持つという。

電気新聞2022年2月4日