経済産業省は4日、脱炭素に向けた産業構造転換を促進するため、独占禁止法の適用条件緩和を含む新たな競争政策を検討する方針を示した。脱炭素化に資する生産設備集約や、サプライチェーンの脱炭素化に向けた企業間合意などについて、強く後押しする意向。公正取引委員会と連携して今後検討する。来春に取りまとめる「経済産業政策の新機軸」に盛り込み、炭素中立・高付加価値型の産業構造転換を促す。

 同日開かれた産業構造審議会(経産相の諮問機関)経済産業政策新機軸部会の第3回会合で、グリーン社会実現に向けた課題を取り上げ、検討の方向性を示した。脱炭素化に資する企業間合意を後押しする一方、イノベーションを不当に抑制しようとする動きは厳しく対処する。

 経産省によると、オランダではかつて、温室効果ガス排出削減などに向けた協定に基づき、複数社が5つの石炭火力を閉鎖する計画を立てたものの、カルテルだとして頓挫した。エネルギー生産能力の減少に伴って、電力価格が上昇するとの懸念が競争当局にあったためだ。こうした事例をきっかけに、オランダでは持続可能性と競争政策の在り方に関する議論につながった。

 日本でも競争政策に環境価値の視点を取り入れる方向だ。「経済産業政策の新機軸」では競争政策のほか、エネルギー転換を効率的に進めるための産業立地政策や、民間の大胆な投資を促すための政策などを盛り込む方向。

 新機軸とは別に、産構審と総合資源エネルギー調査会が合同で検討するクリーンエネルギー戦略も、産業政策の視点を取り入れたエネルギー政策などが課題。議論は相互に関連する方向だ。

電気新聞2022年2月7日