HTTR
原子力機構の「HTTR」(茨城県大洗町)。炭素フリー水素の製造に向けて設置許可申請書の作成に着手する

 日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉「HTTR」(茨城県大洗町)で、高温ガス炉の熱を活用した「天然ガス水蒸気改質法」による水素製造の実現に向けて来年度から原子炉設置許可申請書の作成に着手する。二酸化炭素(CO2)を排出せずに水素製造を可能にする「熱化学法ISプロセス」の技術開発も進め、水素製造量の拡大などを目指す。

 政府のグリーン成長戦略にある原子力産業の成長戦略の工程表には、2030年までにカーボンフリー水素製造に必要な技術開発を行うことが記載されている。HTTRでは文部科学省と経済産業省の支援を受け、水素製造試験が進められる。

 この取り組みでは、天然ガスと水蒸気を反応させて水素を取り出す「天然ガス水蒸気改質法」による水素製造施設をHTTRに接続。ガス炉と水素製造施設の接続に必要な機器やシステムの設計技術などを開発し、水素製造を行う。

 既に水蒸気改質器や水蒸気発生器など要素技術の開発は完了しており、原子力機構は22~24年にかけて原子炉設置許可申請書を作成。26年までに原子力規制委員会から許認可を取得し、HTTRの改造や水素製造施設の製作・据え付けを経て、30年から水素製造試験の実施を目指す計画を掲げている。

 ただ、天然ガス水蒸気改質法はCO2排出が伴う。そのためカーボンニュートラル実現は、高温ガス炉の熱源を活用したISプロセスによる水素製造も重要になる。ISプロセスは原子力機構が1990年代から実験を開始。約900度の温度でヨウ素と硫黄を利用し水を分解する水素製造法だ。高温ガス炉の熱を用いればCO2の排出がなく、水素製造が可能になる。

 原子力機構は19年、HTTRが設置されている大洗研究所で、ISプロセス連続水素製造試験装置の150時間連続運転を達成。運転技術や機器の信頼性を確認している。

 しかし、水素製造試験装置による水素製造量は現状、毎時0.1立方メートルにとどまる。そのため研究開発を進め、40年頃までに毎時100~千立方メートルの水素製造技術の確立、50年頃までに毎時1万立方メートル規模の水素製造技術の民間への普及を目指す構えだ。

電気新聞2022年1月14日