関西電力、ダイヘン、大林組は19日、電気自動車(EV)の走行中給電技術の開発に取り組むと発表した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業の採択を受けた。これまで開発に取り組んできた停車中EVへの非接触給電技術を応用。道路に給電装置を埋め込むことで走行中の充電を可能とするとともに、再生可能エネルギー電源の出力変動対策への活用を目指す。2023年度から走行試験を行い、25年大阪・関西万博での実装を目指す。

 走行中EVへの給電は欧州などで取り組みが始まっているが、道路占有や電磁波出力の規制によって社会実装は進んでいない。一方今後、内燃機関車の販売規制などでEVシフトの加速が予想され、大量EVによる充電負荷の分散が課題に浮上する。再生可能エネも大量導入が見込まれ、その出力変動への適応が課題となる。こうした課題を同時解決する技術として走行中EVへの給電に取り組む。

 今回の取り組みでは関電が余剰再生可能エネを活用した最適な給電制御技術などの開発を担当する。ダイヘンは既に事業化している無線給電技術を活用。給電装置の道路上の設置に伴い、さらに精緻な制御が必要となるセンサーによるオンオフなどの課題を解決し、安全性を確保する。大林組は設備の耐久性を確保した埋設方法の検討・開発に取り組む。

 自動車は一般道を1時間走行する場合、うち20分程度は超低速か停車状態にあるという。試算ではこの時間を利用して充電すれば1時間走行に足る容量を充電できるという。構想では信号手前などに30キロワットの給電用コイルを埋設。車両底面で受電する。

 23年度に大分県のダイヘンの試験場で走行試験を行う。「未来社会の実験場」と位置付けられる25年万博では、政府が規制緩和に前向きな姿勢を示している。それを機会に会場や空港など限られたエリアでの導入が始まり、公共交通や商用車など走行時間が長い車両に拡大。「大量EV・大量再生可能エネ」時代となる40年代には、広く公道で普及するというイメージを描く。

 プロジェクトには東京大学、東京理科大学、大阪大学が参画。日本自動車工業会も成果普及に取り組む。

電気新聞2021年11月22日