浜岡3号機放射性液体廃棄物貯蔵タンクの点検で活用するドローン

 中部電力は浜岡原子力発電所の設備点検で、ドローンの活用を進めている。今月から3号機の放射性液体廃棄物貯蔵タンク内の目視点検について、ドローンの本格運用を開始。従来の人力で点検していた場合と比べ、作業量を大幅に削減できる。作業員の負担軽減や安全性向上につながるほか、被ばく低減にも寄与。今後はタンク以外の設備点検に関しても、ドローンの活用を検討していく方針だ。

 3号機の放射性液体廃棄物貯蔵タンクは放射線管理区域内に設置されており、直径4.6メートル、高さ5メートルの円筒形。従来は作業員が点検用の足場を設置し、タンク内に入り込んで目視点検を行っていた。

 ドローンを活用することで足場の設置・解体が不要となり、高所作業の墜落や転落など災害リスクも回避できる。中部電力によると、タンク内での作業量が従来と比べ約8割削減できるという。作業量の減少により、作業員の被ばく低減につながるなど、原子力発電所ならではのメリットもある。

 点検で活用するドローンは、スイス社製の「ELIOS2」。機体の大きさは直径40センチメートルで、球体状の柔らかいガードに覆われている。タンクやボイラー、煙突といったプラント設備の内部でも安全に飛行できる仕様だ。建物の地下ピットや下水道の点検など幅広い施設で実績があり、特に人間が入りづらい狭小空間や危険を伴う作業環境下で効果を発揮できる。

 浜岡原子力発電所では海外プラントの事例を参考に、昨年11月頃からドローンの活用を検討してきた。屋外に設置されている円筒形のタンクで飛行試験を行い、人力による目視点検と同等の精度でタンク内を撮影できることを確認。今月1日から、3号機の放射性液体廃棄物貯蔵タンクで本格運用を開始した。

 今後はタンク以外の設備への導入に向けて、具体的な検討を進める。ドローンの活用範囲を広げ、一層の点検効率化や現場作業の安全性向上につなげていく考え。中部電力は「これからも安全を最優先に発電所の運営に努めていく」としている。

電気新聞2021年11月10日