経済産業省・資源エネルギー庁の有識者会合は26日、今冬(12月~来年3月)の電力需給対策をまとめた。これまでに講じた東京エリアの追加供給力公募などにより全国で安定供給に最低限必要な予備率3%は確保し、昨冬のような燃料制約も回避できる見込み。ただ、現時点で見込めないリスクの顕在化に備えるため、燃料の追加調達を想定した「キロワット時(電力量)公募」を12月までに実施する方針も示した。

 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)電力・ガス基本政策小委員会(委員長=山内弘隆・武蔵野大学経営学部特任教授)で、電力広域的運営推進機関(広域機関)がまとめた今冬の需給見通しを了承。それを基に対策を議論した。

 今冬は東京エリアの追加的な供給力(キロワット)公募に加え、需給逼迫時の自家発電設備のたき増しルールや発電事業者の燃料調達指針なども整備。広域機関が継続的に需給状況をモニタリングするほか、発電・小売事業者による供給力の確保、需要家の効率的な電力使用なども呼び掛ける。

 こうした対策で昨冬のような需給逼迫は回避できる見込みだが、コロナ禍からの経済回復に伴う需要増、国際的な燃料価格高騰など過去にないリスクもある。これらが顕在化した場合に備えた「社会的保険」としてキロワット時公募を実施。沖縄電力を除く一般送配電事業者9社が共同調達する形とした。

 調達量は費用を最小化する観点から保守的に算定。昨冬の需給逼迫時に行われた電力融通量の10日分に相当する約3億キロワット時とした。調達対象は電源かデマンドレスポンス(DR)が想定される。

 応札事業者に対しては過去の稼働実績や調達計画なども確認する方針。燃料であれば通常時よりも在庫水準が高まるといった「追加性」の有無を厳格に確認していく。落札事業者には一般的なLNG(液化天然ガス)火力の限界費用とされる1キロワット時当たり10円以上を基本に市場への売り入札を求める。

 今後は一般送配電事業者が具体的な要件を定めた募集要綱を策定し、11月後半をめどに公募を開始。12月に落札者を選定するスケジュールも示された。

電気新聞2021年10月27日