自動車工場のオール電化は、技術革新と生産コスト低減のハードルを越える必要がありそうだ(写真は日産の栃木工場)



排出実質ゼロへ、SOFCと再エネ活用

 日産自動車が今月、2050年までに自社の工場をオール電化にする目標を発表した。鉄の鋳造やアルミの溶解などに使う設備を電化する。消費電力は水素やバイオエタノールなどの代替燃料を使った固体酸化物型燃料電池(SOFC)と再生可能エネルギー由来の電力で賄い、自動車製造時の二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする方針だ。ただ、この目標の実現性についてエネルギー業界からは疑問の声が上がっている。

 日産は1月、材料調達から自動車の製造、廃棄までのライフサイクル全体で、50年までにCO2排出量実質ゼロを目指す目標を掲げた。工場のオール電化は、この目標に基づく取り組みの一環だ。

 日産は今月8日、電気自動車(EV)「アリア」や高級車を生産する栃木工場(栃木県上三川町)の見学会を報道向けに開いた。その中で、坂本秀行副社長が「50年に生産工程を電化し、エネルギー源を再生可能エネと代替燃料による発電に置き換える」と語った。

定置用を実証、大型化・高効率化探る

 同社は16年にバイオエタノールを燃料とする車載用SOFCと試作車を開発した。この経験を生かし新たに定置用SOFCを開発、22年から栃木工場で定置用SOFCの実証実験を行う予定だ。

 定置用SOFCの出力は5キロワット、発電効率は60%としている。日産は定置用SOFCについて、25年までに出力を30キロワットに大型化し、発電効率も70%まで高める計画だ。自家用発電設備として30年の実用化を目指している。

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを説明する坂本副社長

 坂本副社長が工場のオール電化で「割と難しい。今後も技術開発が必要だ」と捉えるのが、炭素鋼やアルミ部品の生産工程だ。日産は鉄の鋳造について、溶鉱炉から電炉の一種「高周波誘導炉」に切り替える方針。アルミの溶解についても、じか火による加熱から遠赤外線ヒーターに更新する。同時に工場の省エネルギー化を進めてオール電化を実現する構想を描く。

「高温領域はガス必要」の声、コスト増も課題

 高周波誘導炉は富士電機などが手掛けており、自動車メーカーや部品メーカー向けに実用化されている。一方で、アルミの溶解などに使う高温領域の炉は「ガス燃焼が必要」(ガス業界関係者)という。同関係者は、将来はCO2フリー水素を使って製造するカーボンニュートラルメタンを活用し、生産工程の脱炭素化に貢献したい考えも示す。

 電力関係者も日産のオール電化戦略について「実現可能性は将来の技術革新に左右される」と指摘する。「(オール電化によって)生産コストが増加した際、顧客が受け入れるのだろうか」との懸念もあるという。日産は現時点で、オール電化によるコスト変動は「試算していない」としている。

電気新聞2021年10月21日