社名変更を機にデジタルサービスを強化する(写真は米国に納めたコンデンサー)

 日立製作所は、13日付で日立ABBパワーグリッドの社名を日立エナジーに変えた。日立ABBは欧州重電大手ABBの送配電システム事業買収に伴い、2020年7月に設立。これまでABBの製品群と日立のIT基盤「ルマーダ」を融合し、系統運用システムなどを高度化してきた。今後は今年7月に日立傘下に入った米IT大手グローバルロジックとの連携もテーマ。社名変更を機に、デジタル技術に一層磨きをかける。

米IT大手買収、開発迅速化も期待

 日立は、グローバルロジックの買収に1兆円強を投じた。同社はデジタルトランスフォーメーション(DX)のエンジニアリングや設計、コンテンツ開発が強みとなる。

 当面、グローバルロジックは既存顧客となる通信や製造業向けのデジタルサービスを手掛ける。ただ同社を傘下に持つ日立グローバル・デジタルホールディングスの熊崎裕之デピュティCEO(最高経営責任者)は、エネルギー業界向けのサービス創出にも力を入れる方針を示す。

 9月に開いた戦略説明会では「日立のエネルギーセクターでもグローバルロジックの技術を発揮できる。22年度にもDXサービスを投入する」と話した。

 グローバルロジックとの連携は、日立の小島啓二社長も期待を寄せる。小島社長は11日に開幕した日立のオンラインイベントで「再生可能エネルギーの導入を支える送配電事業のデジタル技術は、世界で需要がある。グローバルロジックを生かして、価値の高いデジタルサービスを創出する」と語った。

 送配電事業のデジタル技術でライバルとなるのは、世界の重電メーカーやIT、コンサルティング企業。特に、アクセンチュアなどIT、コンサル大手は、データ分析や電力系統の制御、遠隔監視に強みを持つ。日本に参入した海外IT大手は、アセットマネジメントなどの技術も発信する。

「競争の激しい分野」で提案力強化

 小島社長は送配電事業向けのデジタルサービスが「競争の激しい分野」と認めつつも、「日立とABBは長年各国の送配電事業会社と連携してきた。この関係性を強化する。顧客との共創が今後の成長を支える力になる」と話した。

 グローバルロジックとの連携では、サービス開発の迅速化も期待されている。同社はDX人材を数多く抱え、顧客課題に迅速に対応する体制を整える。日立エナジーはこうした迅速化の仕組みも取り込み、提案力の強化につなげる考えだ。

 日立エナジーのクラウディオ・ファキンCEOは13日、社名変更に関して「クリーンエネルギーへの移行に向けて、イノベーションを進める」とのコメントを発表した。技術融合をベースとしたイノベーションとサービス開発の迅速化で、日立エナジーを成長へと導く考えだ。

電気新聞2021年10月14日