エコキュート市場が活況を呈している。出荷台数は2020年度下期から前年度比でプラスに転じ、21年度に入ってから勢いが増している。その要因としてメーカー関係者が口をそろえて指摘するのが「買い替え需要」。黎明(れいめい)期に導入されたエコキュートを中心に、買い替えの波が到来している。各メーカーはその波に乗ろうと、省エネルギー性や清潔機能を押し出した新製品を相次いで発売している。

日立GLSのエコキュート新製品。省エネ性やIoT機能などを強化した

 日本冷凍空調工業会の統計によると、21年度の出荷台数は、直近の8月まで全ての月で前年同月比プラスとなった。前年同月比20%前後の伸び率が続き、6月に至っては同43%に達している。

 エコキュートの出荷台数は、東日本大震災後にオール電化に対して吹き荒れた逆風を乗り越え、16年度から堅調に推移していた。しかし20年度に入ると、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の影響などで住宅関連の工事がストップ。上期は同10%前後の減少を記録する月が目立った。

 一方で、感染防止策を講じた工事など新型コロナへの対応が進んだ下期からはプラス基調に転換。現在まで好調を維持している。
 

出荷台数、2割前後の伸びで推移

 
 エコキュートの快進撃を支えるのは2020年度上期の反動だけではない。最大の要因は買い替え需要だ。

 21年は、エコキュートの販売が始まってから20年を迎える節目の年となる。さらにエコキュートの本格普及が始まったのは04~06年頃。そうした黎明期に販売された製品が耐用年数を次々と迎え、買い替え需要が顕在化してきた。

 コロナ禍が買い替えを促進しているとの指摘もある。衛生意識の高まりや在宅時間の増加に伴う省エネ意識向上が、新規導入も含めてエコキュート購入を後押ししている。外出自粛によりレジャー関連資金をリフォームに振り向ける動きがあったことも、好影響を与えた可能性があるという。

 実際、各メーカーの販売は好調だ。エコキュート市場でトップシェアを争う三菱電機は「買い替え案件が増加し、好調に推移している」(エコキュートを製造する群馬製作所の営業担当者)。同じくシェア上位の日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)も「販売は堅調に伸びている」(国内商品企画部の本田太郎部長代理)と明かす。

 

IoT機能など追加し高性能化

 
 買い替え需要を取り込もうと、各メーカーは新製品を市場に投入している。黎明期と比べ高まった省エネ性や清潔機能に加え、当時はなかったIoT(モノのインターネット)機能もアピールポイントに据える。

 日立GLSが今月発売する新製品は、断熱性の向上により高い省エネ性を実現。2カ所同時に給湯しても勢いが弱まることなくシャワーなどを利用できる機能も搭載する。さらにスマートフォンアプリとの連携により、湯張りなどの操作を遠隔でできるようにした。

 三菱電機が昨年発売した新製品は、深紫外線を照射して菌の増殖を抑える機能を新たに備える。貯湯タンクに真空断熱材を採用し、省エネ性も高めた。浴室暖房機との連動運転といったIoT機能にも注目が集まる。

 パナソニックも昨年から今年にかけて発売した製品で、IoT機能を強化。スマートフォンアプリと連携して、災害警報や注意報の発令中に自動で満水まで沸き上げる機能を搭載した。アプリを通じて、湯張りや追いだきなどの遠隔操作もできる。

 買い替え需要の今後の見通しはどうか。メーカー関係者の見方は「しばらく継続する」で一致する。各メーカーは機能強化や省エネ性向上の手綱を緩めない構えで、エコキュートの出荷台数は引き続き堅調な伸びが期待できそうだ。

電気新聞2021年10月5日