出資について会見するJERAの小野田聡社長。「大手ユーティリティーの経営に直接関与することで、スピーディーで効果的に脱炭素化を進めることが可能になる」と強調した

 JERAは27日、フィリピンの電力大手、アボイティス・パワーの発行済み株式の約27%を、アボイティス・エクイティー・ベンチャーズなどから約15億8千万ドル(約1750億円)で取得すると発表した。再生可能エネルギーやLNG(液化天然ガス)火力発電などの開発に共同で取り組み、フィリピンのエネルギー分野における脱炭素化に貢献する。JERA発足以降、海外投資額としては最大で、日本企業によるフィリピンへの投資でも最大規模となる。

 アボイティス・エクイティー・ベンチャーズなどと同日、株式売買契約を締結。許認可手続きを経て、2021年度中に株式取得を完了する予定。取得完了後の株主構成は、アボイティス・エクイティー・ベンチャーズが52%、JERAが27%、その他が21%になる。JERAはアボイティス・パワーへ、取締役として2人と、社員を数人派遣する。

 アボイティス・パワーは、フィリピンの発電容量の約2割に当たる約460万キロワット(建設中を含む)の発電設備を保有・運営し、一部では配電事業や小売事業も展開。30年までに設備容量を920万キロワットまで引き上げるとともに、現在は火力75%、再生可能エネ25%の設備比率を各50%にする目標を掲げている。

 火力では、これまでフィリピンで導入実績がないLNGの開発を進める。LNGの調達から発電まで一体化したプロジェクトの共同開発や、既存火力への技術協力などで合意。27日には株式売買契約と併せ、LNGの調達で協業していく基本合意も締結した。LNGの共同調達などが視野に入っている。

 今後はアボイティス・パワーと、脱炭素を目指すロードマップを策定する。JERAが技術開発しているアンモニアや水素を活用したゼロエミッション火力を、アボイティス・パワーの発電所に導入することなどを探る。

 経済成長が続くフィリピンの電力需要は、30年までに年平均4.2%程度の伸びが予想されている。電力インフラの整備は急務だが、エネルギー資源は多くを輸入に頼っている。JERAとアボイティス・パワーはこれらの状況を考慮しながら、電力の安定供給と脱炭素化、低コスト化に取り組んでいく。

電気新聞2021年9月28日