遮断、絶縁にSF6ガスを使わない機器の開発が進んでいる(写真は三菱電機の真空遮断機)

 六フッ化硫黄(SF6)ガスを使用しない変電機器の開発を巡り、重電メーカーが同業他社と連携する動きが広がっている。SF6ガスは高い絶縁性能を誇るが、二酸化炭素(CO2)と比較して温室効果が高い。SF6ガスを代替するガスは低圧機器向けで開発されているが、高圧機器向けは絶縁が難しく各社が研究段階だ。高圧機器用の代替ガスの早期実用化へ、三菱電機などは他社と協業。相次いで研究の陣営が出来上がった。各陣営はそれぞれの戦略や開発ターゲットを設け、実用化を急いでいる。

 SF6ガスはCO2の2万3500倍の温室効果を持つ。変電機器の稼働時に漏れることがないものの、わずかだが機器生産時や点検時に漏れる。災害などで機器が損傷した場合も外部放出が懸念されている。

 世界的な環境意識の高まりで、SF6ガスフリーの製品の需要は欧米を中心に高まっている。米カリフォルニア州大気資源局は、2025年までに14万5千V以下でSF6ガスを用いた変電機器の利用を禁止すると決めた。米送配電事業者PG&Eも、代替ガスを使う遮断器の採用数を広げる方針を打ち出している。

 こうした動きを受けて、変電機器を手掛ける国内外のメーカーはSF6ガスを代替するガスを研究。これまでに酸素と窒素を混ぜた混合ガスや真空遮断技術などを開発した。これらは低圧用の変電機器に適用し、SF6ガスと同等の遮断、絶縁性能を発揮している。ただ高圧となると、SF6ガス並みの遮断性能を持つガスは実用化されていない。

 この課題に対応するため、メーカー同士が相次いで連携している。三菱電機は独シーメンス・エナジーと協業すると6月に発表。SF6ガスを使わない24万5千V遮断器の開発へ最適な仕様などを検討する。

 東芝エネルギーシステムズも同月、明電舎と協業すると発表した。この陣営は、まずSF6ガスフリーの8万4千Vガス絶縁開閉装置(GIS)を22年度に製品化する目標を掲げる。

 SF6ガスの代替ガスを相互利用する動きも出てきた。4月には日立ABBパワーグリッドと米ゼネラル・エレクトリック(GE)が代替ガスを相互利用するクロスライセンス契約を締結。互いのガスを利用することで、変圧器や遮断器のラインアップを拡充する戦略だ。

 日立ABBは単独の研究も継続する。8月には代替ガスを使用する変電機器の開発ロードマップを公表した。22年末にも世界初となる42万VのGISを投入する方針だ。

 三菱電機と連携するシーメンス・エナジー日本法人の大築康彦社長は「脱炭素化の流れで今後SF6ガスに厳しい目が注がれる。SF6ガスフリーの高圧機器を作るために知見を共有するのは重要。声が掛かれば三菱電機以外との協調も考えていきたい」と他社との連携を歓迎する考えを示している。

電気新聞2021年9月24日