2024年からの次世代スマートメーター導入開始に向け、サイバーセキュリティー対策、特高・高圧メーターの機能、Bルート通信方式、特定計量器データの活用、ガス・水道事業との共同検針といった検討項目が残っている。この最終稿では、それぞれの論点をレビューするとともに、次々世代を見据えて将来の需要家像やSociety5.0の根幹となるセクターを超えたデータ活用による新たなサービス創出・街レベルでの生活の質向上へのつながりについて考える。

 電力のデータを計量・伝送するだけでなく需要家を系統から切り離す機能を有し、他の機器の接続も想定されるスマートメーターにおいてサイバーセキュリティー確保は重大事項であり、世界的に整備されてきたセキュリティー対策フレームワークや、メーターの設計・製作の段階で対策を織り込むセキュリティー・バイ・デザインの考え方を取り入れて検討が行われている。特高・高圧メーターについては低圧メーターと同様に計測項目増・データ粒度細分化やLast Gasp機能などの必要性・効果について、設置位置の違いなどを考慮し検討する。

 Bルート通信方式については、導入が進みつつあるHEMSや需要家のエネルギー機器の一層の活用の観点で欠測などの課題が指摘され、現行の920MHz帯Wi―SUNやPLCに加え、広く普及している2.4GHz帯Wi―Fi方式の実装が提案された。電波強度・到達性や利便性などの観点から技術的評価を行い、特高・高圧メーターも含め採用する通信方式を判断することとなっている。
 

計量法一部緩和、多様な計測値を電力取引に活用

 
 需要家の分散電源などエネルギー資源活用促進の観点から、機器ごとの計量を可能にするため計量法が一部緩和され、2022年度から適用が始まる。具体的には、太陽光発電や蓄電池のパワーコンディショナー、電気自動車の充放電器などに内蔵されるメーターが一定の基準を満たせば活用可能となり、計量法の特定計量器であるスマートメーター以外の計量値も電力の取引に使用されていくこととなる(図1)。これらのデータの収集・送信をどのように行うかは、メーターやMDMSなどの仕様に関わるため連携した検討が必要である。
 最後に共同検針であるが、ガス・水道のメーターのデジタル化が進められており、既に構築されている電力スマートメーターの通信網に相乗りすることでコストメリットが期待できる。主たる課題は、電池で駆動するガス・水道のメーターを電力メーターとつなぐ通信方式・インターフェースの要件であり、各事業者がカバーするエリアが業界間で単純な対応関係にないため、全国の事業者共通の仕様の検討が進められている。
 

次々世代、データ収集するGW機能の統合も

 
 電力データに加え、住宅のエネルギー機器やガス・水道のデータは、再エネ導入拡大をサポートする分散協調・地産地消型エネルギーシステム実現や、高齢者見守り、災害時の避難誘導等の安全・安心サポートなど、福祉・生活の質の一層の向上のための基本要素であり、サステナブルな街づくり・自治体サービス革新の根幹として期待されている。これらのデータをどのように収集・蓄積し活用できるようにしていくかは、マイナンバーや医療・金融なども含む社会全般の領域を対象にスーパーシティー構想のベースとして検討されているところだ。事業者が独立にデータを収集することも考えられるが、様々なデータを収集できるゲートウエー(GW)を用意し、需要家データプラットフォームに集約して、他のシステムとデータ交換を行う汎用性・拡張性が高い仕組みが望ましい(図2)。

 直近では、電力スマートメーターのデータ伝送制約から、他メーターや機器などのデータのうちどれをAルートに載せるか(対応するGW機能をメーターに搭載)が重要な論点である。将来的には、このような機能のGW全体を電力メーターに統合することが考えられ、これは次々世代に向けた構想の一つであろう。

電気新聞2021年6月7日

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