実海域で5月に実施したドローンのテスト飛行

 関西電力はドローンの実海域での自律飛行に国内で初めて成功した。関電が2020年から進める人工知能(AI)とドローンによる洋上風力設備自動点検システム開発の一環。プロジェクトではドローンが自律的に設備まで飛行した上で画像を撮影、その画像をAIが解析し修理の要否などを自動で判定することを目指している。今回の成果などを踏まえてさらに開発を進め、22年度末にもサービスの提供を開始したい考えだ。

 開発中のシステムは落雷などで洋上設備が停止した際、設備外観の確認に使用することを想定している。発電設備の停止信号を受信したコントロールセンターがドローンに命令を出すと、現地まで飛行し自動で外観の画像を撮影する。画像はAIが解析して損傷を確認し、人が現地まで点検に向かう必要性の有無を判定する。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業の一環として、土木建築室を中心に開発に取り組んでいる。

 テスト飛行は法人顧客へのデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を担うグループ会社、Dshift(大阪市、角田恵社長)が関電からの委託を受けて実施。5月に陸上から約2キロメートル離れた洋上設備までドローンを飛ばした。強風が吹きやすい洋上を安定して自律飛行できることや、設備の画像を自動撮影できることなどを確認した。

 洋上風力の点検は現状、人が船舶で現場まで赴き目視で行うのが主流。そのため陸上風力より多くの維持管理費が必要となる。このドローンを活用すれば、目視だけに頼る点検より設備の停止時間を約75%削減できると試算する。

 今回テスト飛行した機体は着床式に対応するが、浮体式向けの開発も今秋に本格開始する予定。関電などが進めている秋田港の洋上風力発電所運開に合わせ、どちらも22年度末からサービス展開する方針。自社設備で活用するほか、他社からの点検業務の受託なども視野に入れる。

電気新聞2021年8月19日