北海道電力の苫東厚真発電所。4号機を対象にCCUSの全体コストの検証などを行う

 北海道電力、IHI、JFEエンジニアリングは6日、商用の大型石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)回収・利用・貯留(CCUS)の実施に向けた調査を8月から始めたと発表した。苫東厚真発電所4号機(厚真町、70万キロワット)を対象に、CCUSの全体コストの検証や、CCUS設備の仕様・運用方法の机上検討などを2023年2月まで行う。北海道電力は、カーボンニュートラルの実現に向けて発電部門のCO2排出を50年時点でゼロにすることを目指している。実現への重要な手段となるCCUSの知見を獲得したい考えだ。

 調査は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託した。期間中、3社共同でCCUSの技術課題を整理し、実用化に向けたシナリオの作成も手掛ける。北海道電力は火力ボイラーメーカーとしてCO2回収に関する技術的な知見を持つIHIと共同で、CO2分離・回収設備と苫東厚真4号機の最適な運用方法を検討する。石炭火力由来のCCUSのコストも共同で検証する。

 CO2分離・回収設備で必要になる蒸気は火力発電所から供給するが、同設備での蒸気使用量が発電所から取り出せる蒸気の量を超えると、発電所の運転に影響を及ぼす可能性がある。このため、北海道電力とIHIは苫東厚真4号機の実際の運転状態に応じた取り出し可能な蒸気量の検討なども手掛ける。

 IHIは加えて、CO2の精製設備と圧送設備に関する技術検討も担当する。JFEエンジニアリングは、回収したCO2を利用地点まで送るためのパイプライン設備の仕様を検討し、技術的課題を整理する。

 北海道電力が、商用火力由来のCCUSの実施を見据えた調査に乗り出したのは初めて。調査事業が23年2月に終了した後、CCUSを実用化するためには小型のテストプラントを用いた研究開発や商用規模の関連設備を用いた試験が必要との認識を示している。

電気新聞2021年8月10日