水素専焼を目指す「クリケット・バレー天然ガス火力発電所」

 JERAが事業参画しているクリケット・バレー天然ガス火力発電所(米ニューヨーク州、110万キロワット)は、GEと共同で、水素専焼に向けた実証に取り組む。JERAが19日、明らかにした。まず、数週間にわたって水素を5%混焼する実証を、向こう2年以内に行う予定。ガス火力での水素混焼は世界的に事例が少ないため、注目を集めそうだ。

 事業会社のクリケット・バレー・エナジー・センターとGEが15日、同発電所の炭素排出量削減のため、水素専焼を目指す「グリーン水素技術ロードマップ」の策定に基本合意した。ロードマップでは、水素の割合を高めるために必要な技術開発などの計画を示した。

 ニューヨーク州は「気候リーダーシップ・コミュニティー保護法」で、2040年までに電力部門からの炭素排出ゼロを義務付けている。同法を受け、同発電所は燃料の天然ガスをグリーン水素に変換する可能性を探る。

 5%混焼は、GEの燃焼技術を活用し、同発電所1号機(約37万キロワット)で実施する予定。両社は今後、主要な水素供給事業者などとパートナーシップを拡大していく方針で、水素の製造や輸送、供給、貯蔵に関する政策ガイダンスを策定するため、同州や連邦機関とも協議を行う。

 JERAは事業会社の権益のうち、約38%を保有する最大の出資者。日本では火力発電所での水素利用は、水素キャリアの技術開発が必要なため、導入には一定の期間がかかるとみられる。一方、水素利用が可能な国では、JERAが参画する発電所で水素利用を先行して進め、日本で将来展開できるように技術や経験を蓄積していく。

 米国では、JERAが参画する別の火力発電所でも水素利用の検討が進むなど、水素利用の拡大に向けた動きが活発化している。

電気新聞2021年7月20日